マイクロストラテジーのビットコイン保有首位と供給シェアの変化

4月20日、米国のマイクロストラテジー社がブラックロックの現物ETF保有量を上回ったというニュースが市場に大きな衝撃を与えました。同社は25.4億ドルを投じてビットコインを追加購入し、合計保有数は81万5061BTCに達しています。日本円に換算すると約3兆8100億円に相当するこの巨額保有は、一企業が特定のデジタル資産を独占する異例の事態を示しています。


この出来事は、日本の機関投資家や上場企業の財務戦略にも再考を迫るものとなります。これまでビットコイン投資といえば現物ETFを通じた間接保有が主流になると考えられてきましたが、特定の事業会社がそれを凌駕した事実は市場の力学が変化したことを物語っています。円安が進行する日本市場において、現金を資産として保有し続けるリスクへの対抗策として、同社の動向は無視できない先行事例となっています。


市場の主導権が受動的な運用会社から、強い意志を持つ事業会社へと移った影響は広範囲に及びます。日本国内でもメタプラネット社が同社の手法をモデルにビットコインの累積保有量を1000BTC超まで拡大させるなど、法人による直接保有の動きが具体化しています。これは単なる投資ブームではなく、企業の貸借対照表を強化するための戦略的選択として定着しつつある変化の兆しです。


資産の流動性という観点からも、今回の逆転劇は重要な転換点と言えます。ETFの保有分は不特定多数の顧客の意思によって売却される可能性がありますが、事業会社の保有分は経営戦略に基づいた長期保有が前提となります。このような保有主体の変化は、ビットコインが市場の需給バランスにおいてより強固な土台を持つようになったことを意味しています。




負債を活用した買い増し戦略が日本市場に投じる波紋


同社が採用する戦略の核は、低利の転換社債や優先株を発行して調達した資金をビットコインに投じる点にあります。直近ではSTRCという永久優先株を発行しており、投資家には年利11.5パーセントという極めて高い配当を約束しています。配当負担は、優先株発行額の約78億ドルに11.5パーセントを乗じた年間約1350億円に達し、さらに転換社債の利払い費用として約450億円の負担が見込まれる計算になります。


こうした強気の姿勢は、常に財務的な脆弱性と隣り合わせであることも事実です。本業のソフトウェア事業がキャッシュフローでマイナスを記録する中で、巨額の債務利払いを維持するにはビットコイン価格の継続的な上昇が前提となります。仮に価格が5万ドルを下回るような事態になれば、負債支払いのために保有資産の2から3パーセントを売却せざるを得ないリスクを孕んでいます。


日本企業の経営感覚からすれば、このようなレバレッジ戦略は極めて挑戦的な手法に映るはずです。実際に同様の業界でコインベース社が40億ドル以上の現金を確保して財務の健全性を維持しているのと比べると、同社の財務構造は一点突破型の危うさを内包しています。投資家は、価格上昇による資産増大という側面だけでなく、金利上昇や価格停滞時に生じる財務的な圧迫要因を冷静に評価することが求められます。


特に日本国内においては、法人の暗号資産保有に関する期末時価評価課税の見直しが進んでいる点に注目すべきです。これまで日本企業がビットコインを保有する際の最大の壁であった税制が緩和される方向にあるため、同社のような戦略を検討する余地が生まれています。しかし、同社のような極端なレバレッジを伴う手法をそのまま模倣することは、リスク管理の観点から慎重な議論が必要となります。




取引所の在庫枯渇が招く供給ショックの現実的な脅威


ビットコインの総発行量2100万個のうち、マイニング可能な残量は4月現在で約95万から105万個程度と推測されています。これに対し、機関投資家による買い占め速度は年々上がっており、市場の流動性は急速に失われつつあります。世界中の取引所における在庫数は4月中旬に221万BTCまで急落し、2017年12月以来の最低水準を更新しているのが現状です。


供給が絞られる中で需要が増大すれば、取引環境における実質的なコストが増大する可能性があります。例えば、流動性の低下により国内取引所でもスプレッドが従来の0.5パーセントから1.5パーセント以上に拡大するなど、個人の売買コストに直接的な影響を与えることが予測されます。誰かが売却しない限り市場に供給されない構造が強まっており、これは中長期的な価格の底上げを支える要因となり得ます。


ただし、供給不足の懸念がすべて価格上昇に直結するわけではないという点には注意を要します。大手機関の取引の多くは市場外の相対取引で行われるため、表面的な在庫データだけで将来を断定するのは早計です。日本の金融庁による規制や投資家保護の観点からも、グローバルな供給不足が国内の法整備や法人参入にどのような影響を与えるのかを注視すべきです。


市場における供給ショックは、価格のボラティリティを極端に高める側面もあります。売り注文が少ない中で買いが入ると価格は急騰しますが、逆のケースでは支えがなくなり急落する危険性も排除できません。私たちは、かつてのような個人主導の相場ではなく、クジラと呼ばれる大口保有者の動向がすべてを決定する市場環境に身を置いていることを自覚する必要があります。




多角的な評価指標から読み解く投資の妥当性


現在のマイクロストラテジー社の評価は、投資家の立ち位置によって大きく分かれています。株価と保有資産の価値を比較するmNAV指標において、個人投資家が重視するベーシック基準は0.9倍と約10パーセントのディスカウント状態で取引されています。一方で、優先株等を含めた希薄化後指標は0.99倍と、ほぼ実体価値に近い水準を維持しています。


興味深いのは、プロの投資家が重視するエンタープライズバリュー基準のmNAVが1.16倍というプレミアムを維持している点です。これは機関投資家が、現物のビットコインを直接保有するよりも、同社の戦略的保有能力に付加価値を見出している証拠だと言えます。日本国内でもSBIホールディングスが米国大手と提携し、法人向けの資産管理サービスを拡充するなど、同社のような戦略を支えるインフラが整い始めています。


法人や個人が今後検討すべきポイントは以下の通りです。


  • 運用手数料の発生有無

  • 管理体制の利便性

  • 負債によるレバレッジ効果

  • 日本国内の税制改正動向

  • 発行体特有の財務リスク


結局のところ、今回の首位交代劇はビットコインが既存の金融システムの中枢へ深く組み込まれる過程の一場面です。特定の企業が高い占有率を持つことへの懸念はありますが、それは同時にビットコインが企業の基幹資産として認められたことの裏返しでもあります。法人による採用が加速することで、将来的にビットコインは単なる投資商品から、企業の生存戦略を左右する重要なインフラへと変貌していくでしょう。


まずは自身の保有資産における直接保有とETFを通じた間接保有の比率を再確認することが重要です。市場の流動性変化に備えた分散投資を具体的に検討し、特定の指標に偏らない多角的な情報分析を心がけるべき段階に来ています。円安やインフレという外部環境の変化に対し、世界最大の保有者の動向を一つの座標軸として、自身のポートフォリオを最適化する姿勢が求められています。


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