最近の暗号資産ETF市場で面白い現象が起きています。ビットコインETFからは大量の資金が流出している一方で、イーサリアムETFには記録的な資金が流入しているんです。2025年8月のたった1週間で、イーサリアムETFに128億5500万ドルが流入しました。これはビットコインETFの流入額の2倍以上です。
なぜ機関投資家はイーサリアムを選ぶのか
機関投資家のこの動きには、構造的な理由があります。
ビットコインは「デジタルゴールド」ですが、イーサリアムは「デジタルプラットフォーム」なんです。ビットコインが価値保存の手段として優れているのは確かですが、それだけです。一方イーサリアムは、スマートコントラクトを基盤にDeFi、NFT、ステーブルコインなど、無限の可能性を持つエコシステムを作り出せます。
簡単に言えば、ビットコインが金庫なら、イーサリアムは工場のようなものです。
高いガス代(手数料)が、逆に魅力になっているのも興味深い点です。一般投資家には負担となるイーサリアムの高額な手数料が、機関投資家には「セキュリティと信頼性」の証として受け入れられています。大規模な取引を行う機関にとって、数ドルの手数料は問題になりません。むしろネットワークが安定していて検証済みだという信号として解釈されています。
ステーキングで複利収益も狙える
イーサリアムはステーキングを通じて年3-5%程度の報酬を得られます。ただ保有するだけのビットコインと違い、イーサリアムは保有量自体を増やせるんです。
たとえば100ETHをステーキングすると、1年後には103-105ETHになります。受け取った報酬を再ステーキングすれば複利効果も期待できます。長期的に保有量自体が増え続ける仕組みです。
この構造は、マイクロストラテジーのような単純な保有戦略とは次元が違います。
実際の数字で見るETF資金フローの衝撃
2025年8月19日、ビットコインETFから1日で5億2300万ドルが流出しました。同じ日にイーサリアムETFからも一部流出はありましたが、全体的な傾向は全く異なっていました。
1週間の資金フローを比較すると、イーサリアムETFには128億5500万ドルの流入、ビットコインETFには52億4300万ドルの流入。イーサリアムがビットコインの2.4倍の資金を集めています。
特にiSharesイーサリアム・トラスト(ETHA)が米国現物イーサリアムETF市場でシェア1位を獲得し、機関資金の集中度がさらに高まっています。
ステーブルコイン生態系がイーサリアムETF流入の隠れた原動力
グローバルステーブルコインの半分以上がイーサリアム上で動いています。テザー(USDT)やUSDCなど主要なステーブルコインの大部分がイーサリアムネットワークベースで運営されています。ステーブルコイン市場が拡大すれば、イーサリアムの需要も自然と増える構造です。
企業の財務部門も最近、ビットコインよりイーサリアムを好むようになりました。ステーキング報酬で追加収益を創出でき、DeFiプロトコルを活用した流動性管理も可能。NFTやメタバースなど新事業との連携可能性もあります。単に価値を保存するだけでなく、実際に「働く資産」として活用できる点が大きな魅力なんです。
これからのETF市場をどう見るか
ビットコインETFの資金流出が必ずしも悪い信号というわけではありません。市場が成熟し、それぞれの資産の特性に合った投資が行われているとも言えます。
安定性重視の投資家は依然としてビットコインを好み、成長性を求める投資家はイーサリアムへ移動。技術系投資家はイーサリアムエコシステム関連資産に注目しています。
こうした分化は、暗号資産市場が「ビットコイン=暗号資産」という単純な公式から脱却した証拠でもあります。
今後も両方のETFを見ていく価値はありそうです。
本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。