金をブロックチェーンに載せる市場が26億ドル規模になりました。実物の金をデジタル化した「金トークン」の9割以上がイーサリアム上で動いていて、2025年に入ってから供給量が2倍に急増。特にPAX Gold(PAXG)とTether Gold(XAUT)という2つのトークンが市場をリードしています。
金ETFより金トークンが便利な理由
金ETFって、株式市場が開いている時間しか取引できないんです。朝9時から午後3時半まで。でも金トークンなら24時間365日、いつでも売買できます。
もっと大きな違いは「本当の所有権」です。金ETFを買うと、実際には投資信託の持ち分を持つだけ。でも金トークンなら、実際の金の所有権がブロックチェーンに記録されます。
たとえばPAXG 1個は、ちょうど1トロイオンス(約31.1g)の金と連動しています。ロンドンのLBMA認証金庫に実物が保管され、毎月外部監査で確認されているんです。
手数料の差も大きいですね。金ETFは年間0.4〜0.5%の運用費に証券会社の手数料も上乗せ。一方、金トークンはイーサリアムのガス代だけ。最近はレイヤー2のおかげで1ドル以下で済むことも多いです。
DeFiで金を担保に借り入れる時代
金トークンの本当の革新は「DeFi活用」にあります。
従来の金融機関で金を担保にお金を借りるには、面倒な書類や審査が必要でした。でも金トークンは違います。AaveやMakerDAOといったDeFiプラットフォームに金トークンを預けると、すぐにステーブルコインを借りられます。
担保率は通常70〜80%。1,000ドル分の金トークンを預ければ、700〜800ドルを借りられる計算です。スマートコントラクトが自動処理するので、銀行の営業時間を気にする必要もないし、信用調査もありません。
ただし金価格が急落すると自動清算されるリスクはあります。このあたりの仕組みは全部プログラムで決まっています。
イーサリアムが金トークン市場を独占する理由
イーサリアムの金トークン総額が24億ドルを超えたのは「ERC-20規格」のおかげです。すべてのイーサリアムウォレットやDeFiプロトコルで使えます。MetaMaskに保管して、Uniswapで交換して、Compoundで担保にする。全部シームレスにつながります。
主要プロジェクトはこんな感じです:
- PAX Gold(PAXG):Paxos発行、1トークン=1オンスの金
- Tether Gold(XAUT):テザー発行、スイスの金庫で保管
- Perth Mint Gold Token(PMGT):オーストラリア政府保証
- Digix Gold Token(DGX):1トークン=1gの金、シンガポール拠点
最小取引単位も違います。DGXなら1gから始められて少額投資向き。PAXGは0.001個単位で取引できるので、約2ドルから金投資を始められます。
実物の金はどう保管・監査されているか
金トークンの信頼性は「透明な監査システム」から生まれます。
実物の金はロンドンやスイスのLBMA認証金庫で保管。これらの金庫はロイズ・オブ・ロンドンのような世界的な保険会社の保険に入っています。
毎月、Ernst & YoungやBDOといったグローバル会計事務所が実物の金保有量を検証。検証報告書はブロックチェーンに記録され、誰でも確認できます。Etherscanで各トークンの発行量と移動履歴をリアルタイムで追跡できるんです。
NFTみたいに各金塊に固有番号が付いています。PAXG保有者は自分のトークンがどの金塊と紐づいているか確認できます。こんな透明性、従来の金ETFでは無理でした。
規制リスクと注意すべきこと
金トークンも完璧ではありません。
最大の弱点は「中央集権的な保管システム」への依存です。発行会社が破綻したり、金庫が差し押さえられたりすれば問題が起きる可能性があります。
各国の規制もバラバラです。韓国では特定金融情報法で取引所上場が制限されていますし、アメリカでは証券型トークンに分類される可能性も。KYC/AML手続きが必要で、大口取引には報告義務もあります。
スマートコントラクトのハッキングリスクも無視できません。2016年のDAO事件のように、コードの脆弱性が見つかれば資産が丸ごと消える可能性も。だから「監査済みのプロトコルだけ使う」のが重要です。
金トークン vs 金ETF、結局どっち?
金トークンと金ETFにはそれぞれメリットがあります。
安定性と規制の保護を求めるなら金ETF。流動性とDeFi活用を求めるなら金トークン。
金トークン市場が26億ドルを超えたのは、単なる数字以上の意味があります。「伝統資産がブロックチェーンと出会うRWA(Real World Asset)時代」の幕開けです。
不動産、美術品、炭素クレジットまでトークン化が進んでいます。イーサリアムがこの市場をリードするのは、最大のDeFiエコシステム、検証済みのセキュリティ、活発な開発者コミュニティがあるから。
これからもっと多くの実物資産がイーサリアム上でトークン化されていくでしょう。
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