ビットコインと金が別れた日——2025年、安全資産の地図が変わり始めた


2025年、金は史上最高値を更新したのに、ビットコインは横ばいが続いている。数ヶ月前まで似たような動きをしていた2つの資産が、今は完全に別の道を歩んでいます。


金価格は9月に1オンス3,600ドルを突破し、過去最高値を記録しました。一方でビットコインは11万ドル前後で停滞しています。これは一時的な現象なのか、それとも資産の性質が根本的に変わってきているのか。


相関関係がマイナスに転じた理由


2025年初めまで、ビットコインと金の価格は似たような動きをしていました。しかし3月以降、状況が一変しています。


金価格は9月に1オンス3,600ドルを突破し、史上最高値を更新しました。日本でも9月29日に1グラム2万円の大台を突破しています。一方、ビットコインは8月に12万ドルの最高値を記録したものの、現在は11万ドル前後で推移しています。


中央銀行が金を買い続ける理由


金価格上昇の最大の要因は、各国中央銀行による大規模な購入です。2024年、世界の中央銀行が購入した金は1,000トンを超え、過去10年間の平均の約2倍になりました。これが3年連続で続いています。


なぜ中央銀行は金を買い込んでいるのでしょうか。


トランプ政権の関税政策強化や中東情勢の緊張など、地政学的リスクが複合的に絡み合っているためです。さらに、ロシアのウクライナ侵攻以降、経済制裁のリスクを考えてドルから金へ資金を移す動きが目立っています。


中国、ロシアなど新興国の中央銀行が積極的に金を購入し、金ETFへの資金流入も5年ぶりの高水準を記録しました。金は伝統的な安全資産として、その地位を完全に取り戻したと言えます。


ビットコインが取り残された背景


一方でビットコインはどうでしょうか。


かつて「デジタル金」と呼ばれ、金と似た安全資産になると期待されていました。しかし2025年、ビットコインはナスダックなどのリスク資産と似た動きをすることが増えています。


機関投資家が短期的にリスク回避モードに入ると、変動性の高いビットコインより金に資金を移す傾向が強まりました。JPモルガンは「ビットコインが安全資産需要の恩恵を受けていない」と分析しています。


8月のジャクソンホール会議でのFRBパウエル議長の発言を警戒し、投資家がリスク回避姿勢を強めたことも、ビットコイン価格の足を引っ張りました。


100日遅行説は本当か


興味深い分析があります。ビットコイン・カストディ企業テヤによれば、「ビットコイン価格は100〜150日の遅れをもって金価格の方向性を追いかける傾向がある」というのです。


実際、2018年末から2019年にかけても似たパターンがありました。金が先に15%上昇した後、ビットコインが170%急騰したのです。


もしこの理論が正しければ、現在の金価格上昇は数ヶ月後にビットコインの上昇につながる可能性があります。アナリストは「金価格が現在の水準を維持し、ビットコインの価値が金に対してパワーカーブに沿って拡大すれば、年末に25万ドルに達する可能性がある」と予測しています。


ただし、今回は違うかもしれません。ビットコインがETFを通じて制度に組み込まれ、独自の市場サイクルを形成し始めているためです。


投資戦略をどう組み立てるか


この状況で、投資家はどう動くべきでしょうか。


まず認識すべきは、ビットコインと金を同じカテゴリーで考えるのはもう危険だということです。2つの資産が異なる方向に動くということは、ポートフォリオの分散という観点では逆にチャンスになります。


具体的には、金の比重を高めて経済の不確実性や地政学的リスクに備えつつ、ビットコインは長期的な成長可能性を見込んで一定比率だけ保有する戦略が有効です。市場の変動性が拡大する局面では金中心の安定型に、リスク選好が回復すればビットコイン比率を適度に引き上げる柔軟性が必要になるでしょう。


オンチェーン分析企業グラスノードは「ビットコインの下落幅は過去の強気相場における典型的な調整局面と似ている」と指摘し、長期的には依然として肯定的な信号を送っています。実際、長期保有者の売却は減少しており、取引所に移動するBTC数量も減少傾向にあります。


安全資産の定義が変わり始めている


2025年9月現在、金とビットコインのデカップリングは単なる価格差以上の意味を持っています。安全資産という概念そのものが再定義されつつあるのです。


スタンダードチャータード銀行は「ビットコインは主に技術株のように取引されるが、市場パニック時にはヘッジ機能を果たす可能性がある」と分析しています。つまり、ビットコインは金とは異なる、独自の代替資産として確立される道が開かれているということです。


投資家は2つの資産の相関関係の変化を注意深く観察しながら、それぞれの特性に合った投資戦略を立てる必要があります。金は伝統的な安全資産として、ビットコインは新しい形のデジタル資産として、それぞれの役割を果たし始めているのかもしれません。


Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


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