2025年10月、暗号資産市場を取り巻く三つの大きな潮流が同時に動いています。
米ドル指数(DXY)は年初から約4%下落して97〜98レベルで推移し、米国のマネーサプライ(M2)は2025年8月に22.2兆ドルの史上最高値を更新しました。さらに世界のAI市場は2024年に1,840億ドル規模に達し、2030年には約8,267億ドルへ拡大する見込みです。
これら三つの要因が重なることで、ビットコインを含むデジタル資産にとって稀に見る好環境が整いつつあります。
ドル安が資金をビットコインへ向かわせる
基軸通貨である米ドルの価値が下がると、投資家は代替となる価値保存手段を探し始めます。その最有力候補が「デジタルゴールド」と呼ばれるビットコインです。
2025年5月、格付け機関ムーディーズが米国債の格付けをAAAからAa1へ引き下げました。70年以上続いた「絶対安全」の看板が外れた瞬間です。財政赤字の拡大と構造的なインフレ懸念が、米ドルと米国債の信用コストを押し上げています。
実際、過去のデータを見るとドル指数が10%下落するたびに、ビットコインは平均30〜50%上昇するパターンを示してきました。2025年に入ってドルがすでに相当な下落を見せている点を考えると、ビットコイン上昇の第一段階はすでに始まっているといえます。
M2増加が示す資金流入の兆し
2025年8月、米国のマネーサプライM2が22.2兆ドルという史上最高値を記録しました。これは2022年3月の前回ピークを上回る水準です。
M2が増えるということは、市場に流通する資金量が増えているということです。この余剰資金はどこかへ流れる必要があります。
暗号資産アナリストの分析によると、M2の増加後およそ10週間の時差を置いてビットコイン価格が追随する傾向があります。2020年には米国M2が約4兆ドル増加し、同年ビットコインは7,000ドルから3万ドルへと4倍以上に急騰しました。
現在、M2通貨量が19ヶ月連続で増加基調にある一方、ビットコインの総供給量は2,100万枚で固定されています。需要と供給の基本原則から考えても、この構図が価格上昇圧力を生み出すことは明白です。
AI成長が暗号資産インフラを加速させる
2025年はAI技術が産業全体に浸透する転換点です。世界のAI市場は2024年の1,840億ドルから、2030年には8,267億ドルへと約4.5倍に拡大する見通しです。
日本国内でも、2024年のAIシステム市場規模は1兆3,412億円に達し、前年比56.5%増という驚異的な伸びを記録しました。2029年には4兆1,873億円まで成長する予測が出ています。
AI企業が必要とする膨大な計算リソースは、データセンターの拡張需要を生み出します。これが分散型コンピューティングネットワークやブロックチェーン基盤インフラへの需要につながります。特にAIモデル学習に必要なGPU資源を効率活用する分散コンピューティングプロジェクトが注目を集めています。
三つの要素が生むシナジー効果
ドル安による代替資産需要の高まり、M2増加による潤沢な流動性、そしてAI投資ブームによる技術関連プロジェクトの成長。
この三つが同時に進行することで生まれるシナジーは想像以上に大きなものになります。
2025年10月現在、ビットコインは11万ドル台から12万ドル付近で推移しており、米国の複数州で「ビットコイン準備金法案」が可決されています。テキサス州やニューハンプシャー州など、州政府レベルでビットコインを戦略的準備資産として認める動きが加速しています。
シティグループは2025年末までにビットコインが13万3,000ドルに達すると予測し、スタンダードチャータードは20万ドル、ヴァンエックは18万ドルという強気の見方を示しています。
投資家が注意すべきリスク
ただし、リスクも存在します。短期的には地政学リスクや規制動向、金融政策の変化が価格変動を引き起こす可能性があります。
実際、2025年9月には米FRB議長の発言を受けて投資家がリスク回避姿勢を強め、ビットコインは一時1,800万円台から1,600万円台まで下落しました。その後10月に入り再び1,800万円台に回復していますが、高値圏での乱高下が続いている状況です。
また、世界のM2が直近2ヶ月で4.1兆ドル減少したとの報告もあり、通貨量の変動性には引き続き注意が必要です。
現実的な投資戦略
- ビットコインやイーサリアムなどの主要暗号資産を中心にポジションを構築する
- AI関連ブロックチェーンプロジェクトへは少額から検討する
- DeFiプロトコルの活用で追加リターンを狙う
- ステーブルコインで一定割合の流動性を確保しておく
投資判断の際は、ポートフォリオ全体の10〜20%程度を暗号資産に割り当てる分散投資の考え方が重要です。
2025年のマクロ環境は暗号資産にとって好機です。ドル安はビットコインの価値保存手段としての魅力を高め、M2増加は十分な流動性を供給し、AI成長はブロックチェーン技術の実用化を後押しします。
ただし、全資産を暗号資産に投じるのではなく、適切なリスク管理のもとで段階的に投資することが賢明です。今起きているのは単なる価格上昇ではなく、新しい金融インフラへの移行過程なのです。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。