ビットコインを持っているだけで何もせず置いている人、多いと思います。実はビットコインの約62%が1年以上まったく動いていないんです。2兆ドル近い価値のうち、DeFiで活用されているのはたった0.79%程度。もったいないというか、ちょっと考えさせられる数字ですね。
2025年9月30日、Starknetというイーサリアムのレイヤー2ネットワークがビットコインのステーキングを開始しました。これまでイーサリアムは380億ドルがステーキングされて収益を生んでいたのに対し、ビットコインはほぼ眠ったまま。その状況がようやく変わり始めています。
ビットコインを手放さずに収益が得られる仕組み
Starknetはゼロ知識証明という暗号技術を使ったネットワークで、イーサリアムより速くて手数料が安いのが特徴です。ここでビットコインをステーキングできるようになったのですが、面白いのは「ビットコインそのものは触らない」という点です。
WBTC、tBTC、Liquid Bitcoin、SolvBTCといった、いわゆるラップドビットコインをStarknetに持ち込んで、バリデーターに委任します。そうするとSTRKトークンで報酬を受け取れる。大事なのは、この間ずっとビットコインの所有権は自分が持ち続けるということ。誰かに預けるわけじゃない、完全な非カストディアル方式です。
ラップドビットコインというのは、ビットコインを他のネットワークで使えるように「包んだ」もの。ビットコイン1枚を預けるとWBTC1枚がもらえて、価値は1対1で連動します。元に戻したければいつでも戻せます。
1億STRKのインセンティブプログラムが動いている
Starknet財団が用意した1億STRKトークン、現在のレートで約1200万~1400万ドルのインセンティブプログラムが進行中です。「BTCFi Season」と呼ばれるこの取り組みで、初期参加者にはかなりの報酬が提供されています。
報酬の仕組みはハイブリッド型。ネットワークの合意形成能力のうち、ビットコイントークンが25%、STRKトークンが75%を担当します。つまりビットコインをステーキングすることで、実際にネットワークのセキュリティに貢献しているわけです。
アンステーキング期間も改善されました。以前は21日間でしたが、現在は7日間。3週間も資金が動かせないのは正直きついですが、1週間なら許容範囲という人も多いでしょう。
実際の始め方はそこまで複雑じゃありません。まずWBTCを取引所で購入するか、手持ちのビットコインをDEXでWBTCに変換。次にLayerSwapやRhinoといったブリッジサービスを使ってStarknetへ移動。Starknetに着いたら、ArgentやBraavosといったウォレットからバリデーターに委任するだけです。Endurのようなリキッドステーキングプロバイダーを使えば、ステーキング報酬を得ながら他のDeFiプロトコルでもトークンを活用できます。
ZK証明技術が支えるセキュリティ
Starknetが採用しているZKロールアップ技術は、ゼロ知識証明という暗号学的な方法です。取引内容を全部公開しなくても、その取引が正当だと証明できる。
楽観的ロールアップは「まず処理して、問題があったら後で巻き戻す」方式なので、最終確定まで時間がかかります。対してZKロールアップは処理の時点で数学的に証明するから速くて安全。特にビットコインとイーサリアムを繋ぐブリッジでこの技術が重要になります。
Starknetはzk-STARKという技術を使っていて、これは将来の量子コンピューター攻撃にも耐性があるとされています。
ただし、リスクもあります。スマートコントラクトにバグがあれば資産を失う可能性はゼロじゃない。定期的に監査は受けているものの、新しい脆弱性が見つかる可能性は常にあります。中央集権化のリスクも完全には解消されていません。シーケンサーが取引順序を操作したり検閲したりできる余地が残っています。
ラップドトークン自体のリスクも無視できません。WBTCはBitGoという企業が管理しているので、その企業に何かあればWBTCの価値にも影響します。だからこそ複数のラップドオプションをサポートすることが重要なんです。
BTCFi市場の成長と今後
2024年にBTCFi市場は約65億ドルまで成長しました。2025年10月時点では84.5億ドルを超えています。Babylonというプロトコルが66億ドルのTVLで市場をリードしていますが、Starknetはイーサリアムとビットコインを同時に活用するという独自のポジションを築いています。
Re7 Capitalのような機関投資者も参入しており、10億ドル以上を運用するこのファンドは10月にビットコイン建ての収益商品をStarknetで開始する予定です。機関の参入は市場が成熟してきた証拠でしょう。
ビットコインをStarknetで使うと、担保融資が受けられます。10万ドル相当のWBTCを担保に5万ドルのUSDCを借りる、といったことが可能です。ビットコインを売らずに流動性を確保できる。イールドファーミングもでき、EkuboのようなDEXで取引手数料と報酬を得られます。
これが革命的なのは、ビットコインが本来できなかったことができるようになったからです。ビットコインネットワークはスマートコントラクト機能が限定的で、基本的に保有するだけでした。それがイーサリアム並みに多様な用途で使えるようになった。
今後は相互運用性がキーワードになりそうです。Solana、Cardano、Aptosといった他のチェーンにもBTCFiが広がっています。LayerZero、Hyperlaneのようなクロスチェーンソリューションも発展中。実物資産のトークン化も注目トレンドで、ビットコインを担保に不動産や債券に投資できるようになれば、活用範囲はさらに広がります。
最後に注意点を。初めての場合は少額でテストすることをお勧めします。ブリッジ作業に慣れていないとミスする可能性がありますし、ガス代もばかになりません。バリデーターは手数料率、パフォーマンス、評判を確認してください。APYが高すぎるところは逆に怪しい。秘密鍵とシードフレーズは絶対に共有しないこと。大きな金額を扱うならハードウェアウォレットの利用をお勧めします。
ビットコインの62%以上が使われずに眠っているという事実は、裏を返せば巨大な潜在力があるということです。この一部でもBTCFiに流れれば、市場規模は相当なものになるでしょう。Starknetがその中心になれるかどうか、見守るのは面白そうです。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。