中国の原油戦略が変える、国際市場の新しい景色


世界最大の原油輸入国である中国の動きに、ちょっとした変化が見えてきました。2024年の原油輸入量は前年比1.9%減の5億5342万トンとなり、過去最高を記録した2023年から減少に転じています。


この数字の裏にあるのは、中国の電気自動車普及の加速です。2025年上半期の新エネルギー車(NEV)販売は693万台に達し、全体の44.3%を占めるまでになりました。電気自動車だけでも441万台が売れ、前年同期比で46%も増えています。


需要の変化が生む市場の静けさ


国際エネルギー機関(IEA)は、中国の石油需要が2027年にピークを迎えると予測しています。これは以前の見通しより約2年早い時期です。背景には電気自動車の「異常な」普及があります。


2025年9月時点で、WTI原油価格は1バレル70.51ドルで推移しています。2024年の平均より低い水準です。中国の需要鈍化が下方圧力として作用していることは間違いありません。


興味深いのは、この変化のスピードが急激すぎないことです。中国の電気自動車市場は2025年に成長率が15-20%程度に落ち着く見込みで、前年の42%増から大きく減速します。補助金の縮小と過剰生産が理由ですが、この緩やかな転換が市場に適応時間を与えています。


備蓄が果たす調整弁の役割


中国は2025年に新しいエネルギー法を制定し、戦略的石油備蓄の運用を制度化しました。価格が急落すれば買い増し、急騰すれば放出する。この仕組みが市場の極端な変動を吸収しています。


同時に進む供給元の多様化も見逃せません。中東への依存度を下げながら、ロシアや中央アジアからのパイプライン輸入を拡大しています。2024年には海上輸入の約26%をロシア、イラン、ベネズエラが占めるようになりました。


静かに進むエネルギー転換


中国の原油需要減少は、単なる景気後退ではありません。構造的な変化です。太陽光や風力発電への投資が世界最大規模に達し、発電における再生可能エネルギーの比重が高まっています。


石油化学産業も自給率を上げており、原材料としての原油需要の伸びも鈍化しています。輸送燃料から工業原料へ、そして徐々にその比重も下がる。そんな移行期に入っているのです。


ソウルから見える未来の輪郭


こうした変化は、韓国のエネルギー政策にも示唆を与えてくれます。隣国の経験から学べることは多いでしょう。急激な転換ではなく、段階的な移行。市場への配慮と政策的な誘導のバランス。


中国が2027年以降も果たす役割は、需要を増やす存在から、供給網を安定させる存在へと変わっていくはずです。国際原油市場の安定には、この大国の慎重な舵取りが欠かせません。


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