DEXの地図が書き換わった―9月に起きた静かな革命



仮想通貨のデリバティブ取引の世界で、誰も予想しなかった変化が起きています。


9月中旬、Aster(アスター)という名前のプラットフォームが突然登場し、わずか2週間ほどでHyperliquid(ハイパーリキッド)の独占状態を崩しました。数字で見ると、Hyperliquidの市場シェアは5月の71%から現在38%まで落ち込んでいます。


私がソウルでこの変化に気づいたのは、いつも使っているトレーディングのコミュニティで「Asterって知ってる?」という質問が増え始めたときでした。最初は「また新しいプラットフォームか」くらいに思っていたのですが、調べてみると想像以上の変化が起きていました。


何が違うのか、実際に使ってみて分かったこと


Asterの特徴は、複数のブロックチェーンに対応している点です。Ethereum、BNB Chain、Solana、Arbitrumといった主要チェーンを横断して使えるので、それぞれのチェーンに散らばっていた流動性を一箇所に集められます。


もう一つ注目されているのが「Hidden Order(隠れ注文)」という機能です。大口の注文を出すとき、他のトレーダーに見られずに約定できるため、いわゆるフロントランニング(先回り取引)を避けられます。これは大きな金額を動かす人にとって重要な機能のようです。


レバレッジは最大1001倍まで設定可能で、Hyperliquidよりはるかに高い倍率を提供しています。ただ、高レバレッジはリスクも高いため、使い方には十分な注意が必要です。


CZの関与が話題になっている理由


Binanceの創業者であるChangpeng Zhao(CZ)がAsterを支援していることも、この急成長の一因でしょう。9月28日、CZはTwitterでAsterについて言及し、元Binanceのメンバーがチームにいることを明かしました。


Asterのトークン($ASTER)は、ローンチ時の0.08ドルから9月24日には2.42ドルまで上昇しています。約2,800%の上昇率です。ただ、その後は調整が入り、現在は1.80ドル前後で推移しています。


注意すべきリスクもある


急成長しているAsterですが、いくつか懸念点もあります。


トークンの大部分が少数のウォレットに集中しているという分析があります。具体的には、6つのウォレットが全供給量の96%を保有しているとされ、大口投資家の動向次第で価格が大きく変動する可能性があります。


また、マルチチェーン対応という特徴は、複数のブリッジやプロトコルに依存することを意味します。それぞれのチェーンでウォレット設定や手数料体系が異なるため、使い慣れるまでは少し複雑に感じるかもしれません。


Hyperliquidも黙っていない


一方、Hyperliquidも反撃の準備を進めています。独自のレイヤー1チェーン上で動作するHyperliquidは、約定速度と流動性の深さでは依然として優位性を保っています。


10月には新しい機能のアップデート(HIP-3)が予定されており、誰でも新しい先物市場を立ち上げられる仕組みが導入される予定です。これにより、プラットフォームの柔軟性が大きく向上すると期待されています。


現在の取引高を見ると、Hyperliquidの24時間取引量は約95億ドル、TVL(総預かり資産)は約35億ドルです。Asterの取引量はピーク時に400億ドルを超えましたが、実際の取引の一部はウォッシュトレーディング(架空取引)ではないかという指摘もあり、数字の信頼性については議論が分かれています。


これからどうなるのか


DEX(分散型取引所)のデリバティブ市場は、2025年に入って急速に拡大しています。9月だけで月間取引高が1兆ドルを突破し、年初から530%も増加しました。


中央集権型取引所(CEX)への規制が強化される中、DEXへの資金流入は今後も続く可能性が高いです。AsterとHyperliquidの競争は、この市場全体の成熟を促す良い刺激になるかもしれません。


どちらのプラットフォームも、それぞれの強みを活かしながら進化しています。速度と流動性を重視するならHyperliquid、マルチチェーン対応とプライバシー機能を求めるならAster、という選択になるでしょう。


投資を考えている方は、トークン価格の急騰だけでなく、プラットフォームの技術的な特徴やリスク要因も含めて、総合的に判断することをお勧めします。


Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


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