「うちの子、どうしていつも布団の中にもぐりたがるんだろう?」そう思っている飼い主さんは多いですよね。単なる甘えや寒さのせいだと思われがちですが、実は猫の生存本能と生理機能に基づいた、非常に理にかなった行動なんです。
猫が布団の中に潜り込むのは、本能的に最も安全で快適な環境を選んでいる結果です。これは、私たちが思っている以上に彼らにとって重要な、二つの理由が絡み合っています。
猫が探す「最高の温度」を布団がくれる
成猫の平均睡眠時間は1日14〜20時間と長く、この長い休息の間、猫は周囲の温度変化にとても敏感です。猫の平熱は私たち人間より少し高めの約38.0°Cから39.2°Cあたりにあります。彼らはエネルギーの消費を抑えるため、体温維持を周囲の環境に大きく頼っているんです。
調査によると、猫が一番心地よく感じる環境温度は26°Cから32°Cという、人間にとっては「少し暑い」と感じる範囲です。人が寝た後の布団の中は、その飼い主の体温が残り、この快適な温度帯を簡単にキープできる最高のスポットになります。特に室温が下がる夜間や冬の時期は、布団の中の温かさが猫にとって最も効率の良い暖房器具の役割を果たしてくれています。
匂いで認識する「絶対安全地帯」
猫の嗅覚は、人間と比べて約15倍も敏感なV1R受容体を持っているほど優れています。彼らは匂いを手がかりに世の中の情報を分析し、特にフェロモンなどの匂いから安心感や仲間との繋がりを感じ取ります。
布団や枕には、当然ながら飼い主の匂いが最も濃く染み付いています。この匂いは、猫に対して「保護者がいつもそばにいる」という、強力な安心のメッセージを伝えます。
飼い主の匂いが充満した布団の中は、猫の縄張り意識を満たしつつ、外敵から完全に無防備になる深い眠りのための「究極の隠れ家」となるわけです。布団で眠る行動は、単なる愛情表現ではなく、この場所が自分の命を守るための安全地帯だと、猫自身が判断した結果と言えます。
安心感を保ちつつ快適に眠るための工夫
愛猫の安心感を尊重しつつ、飼い主さんも心地よく眠るための工夫を少し取り入れてみましょう。
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匂いつきの代替品を設置する 使わなくなったバスタオルや毛布を、猫専用のベッドや隠れ家の中に入れてあげてください。飼い主の匂いを補給することで、布団以外の場所でも猫が安心感を得るように促せます。
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「部分暖房」で快適温度を再現する 室温が24°C以下に下がるようであれば、猫ベッドの近くに低温やけどの心配がないペット用の温熱マットや湯たんぽを置いてみましょう。布団の中のような局所的に温かい空間を作ってあげることが大切です。
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高い場所を安全スペースにする キャットタワーや棚の上など、高さのある場所にふわふわしたクッションを敷くのも有効です。猫は高い場所を捕食者の視線から逃れられる安全地帯と認識します。布団の中と同じように「隠れた安心感」を上手に活用してみてください。
愛猫がなぜ布団に潜りたがるのかが分かれば、提供する場所や温度のヒントが見えてきます。この冬、愛猫にとって一番居心地のいい場所を見つけてあげましょう。