アップルが今後4年間で米国に1000億ドル(約14兆円)を追加投資すると発表しました。これ、単純な米国愛じゃないんです。トランプ政権が海外生産品に最大50%の関税をかけるぞと脅しをかけたら、アップルが切ったカードがまさにこれだったんです。
関税爆弾を避けるには米国で作るしかなかった
トランプ前大統領がインド製のiPhoneにも25~50%の関税をかけるって言い出したんです。半導体に至っては100%の関税もありえるって話まで出てきて。
アップルからしたら青天の霹靂ですよ。iPhone一台売っても半分を税金で持っていかれるなんて。それでティム・クックが下した決断が「米国製造プログラム(AMP)」でした。
核心部品を米国で作れば関税払わなくていいじゃないですか。でもね、完成品の組み立ては相変わらず海外でやってるんです。部品だけ米国産に変えるっていう。賢いでしょう?
ケンタッキーではコーニングがiPhoneのガラスを作り、アリゾナではTSMCがチップを生産。テキサスではサムスン電子がイメージセンサーを製造してます。
サムスンと手を組むアップル、フレネミーの実利追求
アップルとサムスンは法廷で争いながらも、裏では手をがっちり握ってます。サムスンのOLEDディスプレイなしにiPhoneは作れませんから。
今回はさらに一歩踏み込みました。テキサス州オースティンにあるサムスンの半導体工場で、アップル用の部品を直接生産することにしたんです。競争しながらも必要な時は協力する、まさにビジネスの教科書みたいな関係です。
サムスンにとっても悪い話じゃありません。アップルという大口顧客を安定的に確保しながら、米国内の生産基盤も拡大できる。それにトランプ政権の顔色をうかがう必要も減りますし。
TSMCもアリゾナに工場を建設、10社の主要企業がアップルの米国生産に参加してます。みんな関税を避けるために米国に集まってるんですね。
結局iPhoneの価格はどうなるの?
短期的には投資コストのせいで価格が上がるかもしれません。米国で生産すると人件費も高いし、初期設備投資も相当なものですから。
でも長期的に見れば話は変わります。50%の関税を払わなくていいなら、むしろ価格上昇幅は抑えられるかも。アップルの株価もこのニュースで5%以上上がりましたし。
実はアップルがここまでするのは、単にお金の問題だけじゃないんです。米中貿易戦争が続けば、いつサプライチェーンが揺らぐかわからない。米国に生産基盤を作っておけば、そういうリスクを減らせます。
ソウルから見ていると、韓国企業のサムスンがこの動きに深く関わっているのが興味深いですね。グローバル企業の生き残り戦略って、結局は政治と切り離せないんだなって実感します。
6000億ドルという天文学的な金額を米国に注ぎ込むアップル。関税を避ける賢い戦略でありながら、同時に不確実な時代に備える生存戦略でもある。ビジネスと政治が密接に絡み合う時代の象徴的な事例といえそうです。