ソウルの街を歩いていると、誰もがカカオペイで支払いをしています。コンビニも、カフェも、タクシーも。でも今、このカカオと韓国の8大銀行が、まったく新しい「お金」を巡って静かな戦いを繰り広げているんです。
なぜ韓国のステーブルコインは違うのか
韓国でステーブルコインと言っても、USDCやテザーみたいな世界共通のものとは全然違います。
すでに日常生活に溶け込んでいる決済アプリに、そのまま組み込まれる形になるんです。カカオペイには4700万人のユーザーがいて、韓国の人口5200万人のほとんどが使っています。このアプリがそのままデジタルウォンの財布になる。想像できますか?
一方で、KB国民銀行、新韓銀行、ハナ銀行など8つの大手銀行は手を組んで対抗しています。個別に戦うのではなく、連合軍を作る。これ、韓国らしいやり方なんですよね。
韓国銀行の不思議な立ち位置
外国人が一番理解できないのがここです。韓国銀行(中央銀行)は民間のステーブルコインに反対していません。
総裁のイ・チャンヨン氏は「現代の金融環境に必要だ」と公言しています。ただし条件があって、最初は銀行経由でしか発行できないようにして、その後でテック企業にも開放するという段階的アプローチを取っています。
金融委員会(FSC)が主な監督権限を持っているけど、韓国銀行も発行者のデータを要求したり、ライセンスについて意見を言ったり、検査を勧告したりできる権限を確保しました。
つまり「イノベーションはOK、でも私たちの監視下で」というスタンスです。
実際の規制はどう動いているか
2025年に成立したデジタル資産基本法では、ステーブルコイン発行に必要な資本金は5億ウォン(約5000万円)。意外と低いと思いませんか?
でもこれは入場料に過ぎません。本当に重要なのはFSCの承認プロセスで、準備金の要件、透明性、償還保証、既存金融システムとの統合などが細かくチェックされます。
カカオバンクには有利な点があります。3年前から暗号資産取引所に実名口座を提供していて、すでにインフラが整っているんです。
2025-2026年がなぜ重要なのか
みんなが急いでいる理由は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のパイロットプログラムです。
韓国銀行は「プロジェクト・ハンガン」という名前で、10万人の実際のユーザーと7つの主要銀行でデジタルウォンをテストしています。民間ステーブルコインがCBDCより先に定着しないと、チャンスを逃すかもしれません。
銀行は両方に参加できるからリスクヘッジできますが、カカオには民間ルートしかありません。
カカオの本当の強み
カカオの優位性は技術じゃなくて、エコシステムのロックインです。
カカオトークは韓国人のほぼ全員が使うメッセンジャー。カカオペイはモバイル決済の大半を占めています。カカオバンクは2025年に預金が19%も増えて、従来の銀行を上回る成長を見せています。
彼らは新しいステーブルコインを作るんじゃなくて、既存のスーパーアプリにステーブルコイン機能を追加するだけ。これって強いですよね。
銀行連合には信頼と規制当局との関係があります。でもカカオには、もっと強力な武器があります。すでにみんなのポケットに入っているという事実です。
これから起きそうなこと
実は勝者を決める必要はないかもしれません。
韓国は銀行発行と企業発行のステーブルコインが、それぞれ違う目的で共存する二層システムを作る可能性があります。江南の暗号資産OTCデスクでは、すでに両方のシナリオに備えた準備が進んでいます。
もし韓国に興味があるなら、この動きは要チェックです。日本とはまったく違うアプローチで、デジタル通貨の未来を作ろうとしているんですから。