Ethena(イーサナ)のUSDeが2025年9月時点で127億ドル規模まで成長し、Tether(USDT)、USDCに続く第3位のステーブルコインになりました。2024年初めに登場したばかりのステーブルコインが、わずか10ヶ月で100億ドルを突破したのは前例のないスピードです。
デルタニュートラルヘッジでドルペッグを維持する仕組み
USDeの核心は、既存のステーブルコインとはまったく違う「デルタニュートラルヘッジ」という戦略です。
ユーザーがイーサリアム(ETH)やステーキングトークン(stETH)を担保として預けると、Ethenaプロトコルが自動的に同じ規模のショートポジションを開きます。簡単にいえば、担保資産の価格が上がればショートポジションで損失が出て、下がれば利益が出る構造で、お互いに完璧に相殺します。シーソーのように片方が上がればもう片方が下がる、そんなバランスを取っているんです。
こうすることで、暗号資産の価格が激しく動いてもUSDeの価値は1ドルで安定的に保たれます。TetherやUSDCが銀行にドルを預ける従来の方式とは違い、暗号資産そのものを担保にしながらも価格の安定性を確保したわけです。
sUSDeステーキングで年10%以上の収益率
USDeを保有するだけでもいいのですが、sUSDeにステーキングすればさらに収益が得られます。
基本収益率は年4.3%〜10.8%(市場状況により変動)で、最大では年55.8%まで可能です(ファンディング費用が高い時)。収益源はETHステーキング報酬とデリバティブのファンディング費用から来ています。
一般的な銀行預金が年3〜4%であることを考えると、かなり魅力的な収益率です。ただし、ステーキング解除時には7日間の待機期間があり、即座の出金はできません。
最近1ヶ月で供給量が42%急増した理由
2025年7〜8月の間にUSDeの供給量がなんと42%も増えました。ここには3つの主要な要因があります。
まず、暗号資産市場の強気相場です。ビットコインとイーサリアムの価格が上昇し、ファンディング費用が上がったことで、Ethenaプロトコルの収益が増加しました。収益が増えれば、より多くの投資家が集まる好循環構造ができたんです。
次に、GENIUS Act(米国の収益型ステーブルコインを支援する法案)が2025年7月末に通過し、制度的な信頼性が高まりました。
そして、EthenaプロトコルのTVL(総預かり資産)がDeFi6位圏に入り、1ヶ月で30億ドルが新たに流入しました。
ENAトークンの「fee switch」でエコシステムがさらに強化
Ethenaは、ENAというガバナンストークンも運営しています。最近承認された「fee switch」メカニズムが活性化されれば、プロトコル収益の一部がENA保有者に分配されることになります。
活性化条件はUSDeの供給量60億ドル超過(達成済み)、プロトコル累積収益2.5億ドル超過(達成済み)、中央集権型取引所4ヶ所以上への上場(進行中)です。
これが実現すれば、ENAは単純なガバナンストークンから実際に収益を生み出す資産へと変貌します。
リスクも確実に存在します
もちろん良い点ばかりではありません。注意すべきリスクもあります。
ファンディング費用の変動リスク、スマートコントラクトの脆弱性、取引所への依存性、規制の不確実性など、新しい形態のステーブルコインだからこそ規制変化に敏感な面があります。
USDeは革新的なメカニズムで急速に成長していますが、まだTether(1,638億ドル)やUSDC(722億ドル)との差は大きいです。でも10ヶ月で127億ドルを達成した成長速度を見ると、今後の動きがますます注目されます。特に従来のドル担保方式ではなく、暗号資産ネイティブな方式でステーブルコイン市場に新しい選択肢を提示したという点で意味があるといえるでしょう。
今のところ、このような新しいタイプのステーブルコインがどこまで成長できるか、興味深く見守っている状況です。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。