2025年10月1日、米国連邦政府が予算失効により一部閉鎖に入りました。通常であれば市場は不安定化するところですが、今回は異なる動きを見せました。AI関連のインフラ投資と防衛技術の発展という長期トレンドが、短期的な政府機能停止を上回る投資判断材料となったのです。
止まらないAIインフラへの巨額投資
マイクロソフトは2025年度中にAIデータセンター建設に約800億ドル(約12兆6000億円)を投資する計画を発表しており、その半分以上は米国内に充てられます。メタも2025年に人工知能関連プロジェクトへ最大650億ドル(約10兆1700億円)の投資を計画しており、マンハッタンの大部分をカバーする規模のデータセンターを建設するとしています。
さらに注目すべきは「スターゲート」プロジェクトです。OpenAI、ソフトバンクグループ、Oracleが共同で、今後4年間で5000億ドルを投資し、米国内に新しいAIインフラを構築する計画を2025年1月に発表しました。
これらの投資計画は、政府のシャットダウンとは無関係に進行します。投資家たちは、数週間で解決する政府の予算問題よりも、10年単位で続くAI革命のインフラ整備に注目しているのです。
日本でも進む防衛技術のAI化
日本では三菱重工業と川崎重工業が、AI搭載の戦闘支援無人機の開発を進めています。三菱重工は2022年度から防衛装備庁の発注を受けて「無人機へのAI搭載技術の研究試作」を開始しており、2025年中に飛行試験を実施する方針を明らかにしています。
三菱重工業、川崎重工業、IHIの重工大手3社は2025年3月期にそろって過去最高益を記録し、防衛関連事業の売上高は3社合計で前期から25%増加する見通しです。従来の防衛産業は政府予算に依存していましたが、今はAI技術という新しい成長軸が加わっています。
データセンターの供給不足が続く
グローバルのデータセンター市場は、2020年から2028年にかけて年間平均13.5%で成長すると予測されており、市場規模は約20兆円へと拡大する見込みです。日本でもNTTデータは2023年度から2027年度に向けて1.5兆円以上のデータセンター投資を計画しています。
さくらインターネットは2025年6月、石狩データセンター内にコンテナ型データセンターを稼働開始し、NVIDIA H200 GPUを約1000基整備しました。需要の急増に対応するため、従来型より短期間で建設可能なコンテナ型を採用したのです。
シャットダウンは短期、AIは長期
過去のデータを見ると、政府シャットダウンは平均2週間程度で解決しています。一方、AIインフラの構築は今後10年以上続く長期トレンドです。投資家はこの時間軸の違いを明確に理解しています。
実際、IHIは2022年度に1000億円規模だった防衛事業の売上を2030年度までに2500億円規模まで拡大する目標を掲げています。企業の成長計画は数年単位で設計されており、短期的な政府機能停止の影響は限定的です。
金融市場は目の前の混乱よりも、構造的な変化を重視します。AI技術の発展と、それを支えるインフラ需要の急拡大。そして防衛分野でのAI活用という新しい市場の誕生。これらの長期トレンドが、今回の株価上昇の本質的な理由です。