コインベースCEOが語る100万ドルビットコイン:日本の金融規制改革が試金石に


2025年8月、コインベースのブライアン・アームストロングCEOがポッドキャスト「Cheeky Pint」で明らかにしたビットコインの2030年100万ドル予測が、暗号資産業界に大きな波紋を広げています。この強気予測の背景には、米国での規制明確化と政府による戦略的保有という2つの強力な推進力がありますが、実現への道のりは決して平坦ではありません。


アームストロングが描く100万ドル到達への3つのシナリオ


アームストロング氏の予測は単なる願望ではありません。彼が指摘する3つの重要な触媒は、すでに現実のものとなりつつあります。


第一に、米国での規制環境の劇的な変化です。2025年に成立したGENIUS法によってステーブルコインの法的枠組みが確立され、機関投資家が安心して参入できる環境が整いました。アームストロング氏は米国を「G20のベンチマーク」と位置づけ、この規制モデルが世界に波及すると予測しています。


第二に、2025年3月にトランプ大統領が署名した戦略的ビットコイン準備資産の創設です。米国政府は現在20万個以上のビットコインを保有しており、さらに上院では5年間で100万個のビットコインを取得する「BITCOIN Act of 2025」が審議中です。アームストロング氏は「5年前には政府が保有することなど想像できなかった」と語り、この劇的な転換を高く評価しています。


第三に、ビットコインETFへの継続的な資金流入です。2024年1月の米国での承認以来、機関投資家の参入が加速しており、ETF流入とビットコイン価格の相関係数は0.8を超える強い関係を示しています。


日本の規制改革:世界に先駆けるか、取り残されるか


興味深いことに、日本の金融庁も2025年から大胆な規制改革に着手しています。暗号資産を金融商品取引法の枠組みに移行させる動きは、世界的にも注目を集めています。


2025年6月の金融審議会で示された方針によると、金融庁は暗号資産を「有価証券に準ずる金融商品」として位置づけ、2026年の通常国会での法改正を目指しています。これにより、現在最大55%という世界でも突出して高い税率を、株式と同じ20.315%の分離課税に引き下げる可能性が浮上しています。


さらに注目すべきは、日本版ビットコインETFの実現可能性です。WebX2025でKPMGの保木健次氏は「2027年春の施行が想定される」と具体的な時期を示しました。SBIホールディングスはすでに国産ビットコインETFの開発を進めており、金融庁の制度整備が完了次第、東京証券取引所への上場を目指しています。


銀行業界の抵抗:見えない障壁


しかし、アームストロング氏が警鐘を鳴らすのは、既存金融機関からの強い抵抗です。米国では、銀行業界が暗号資産リワードプログラムの規制強化を議会に働きかけており、約6.6兆ドルの預金流出リスクを理由に挙げています。


日本でも同様の動きが見られます。金融庁の規制改革議論では、銀行業界から「暗号資産への急激な資金シフトは金融システムの安定性を損なう」という懸念が示されています。特に、ビットコインETFが実現した場合の機関投資家資金の大規模な流出を警戒する声が強まっています。


量子コンピューティングという時限爆弾


技術的なリスクも無視できません。量子コンピューティングの急速な発展は、ビットコインの暗号化技術に対する根本的な脅威となる可能性があります。現在のビットコインのセキュリティは、現代のコンピューターでは解読に天文学的な時間がかかることを前提としていますが、量子コンピューターはこの前提を覆す可能性があります。


ただし、ビットコイン開発コミュニティも手をこまねいているわけではありません。ポスト量子暗号技術の研究が進められており、必要に応じてプロトコルをアップグレードする準備が進んでいます。


市場の現実:期待と懸念の狭間で


2025年8月時点でビットコインは12万ドル前後で推移していますが、100万ドル到達への道のりはまだ長いです。多くのアナリストは、アームストロング氏の予測に対して慎重な見方を示しています。


マッケイ・リサーチのジェームズ・マッケイ氏は「まずは12万4000ドルを維持できるかを見てみよう」と現実的な視点を提供しています。一方で、ギャラクシー・デジタルのマイク・ノボグラッツCEOは「もし来年100万ドルに達するなら、それは米国経済が深刻な危機にある証拠だ」と警告しており、急激な価格上昇が必ずしも健全な成長を意味しないことを示唆しています。


日本が握る鍵:規制改革の成否


日本の規制改革の成否は、グローバルな暗号資産市場に大きな影響を与える可能性があります。世界第3位の経済大国である日本が、暗号資産を正式な金融商品として認め、税制を国際水準に合わせることは、他のアジア諸国にも波及効果をもたらすでしょう。


特に注目すべきは、日本の機関投資家の動向です。金融庁の調査によると、投資経験者の7.3%がすでに暗号資産を保有しており、ネット系金融機関利用者に限れば10.2%に達しています。ビットコインETFが実現すれば、これまで参入をためらっていた年金基金や保険会社などの機関投資家マネーが流入する可能性があります。


2030年への展望:現実的なシナリオ


アームストロング氏の100万ドル予測の実現可能性について、多くの専門家は20~30%程度と見積もっています。これは決して低い確率ではありませんが、多くの条件が揃う必要があることを示しています。


実現のための必要条件として、以下が挙げられます:

  • 主要国での規制明確化と税制優遇措置の導入
  • 中央銀行や政府による戦略的保有の拡大
  • 量子耐性技術の実装による安全性の確保
  • 既存金融機関との協調的な共存モデルの確立

日本の動向は、これらの条件の中でも特に重要な位置を占めています。2027年に予定される規制改革が成功すれば、アジア太平洋地域全体の暗号資産市場に新たな活力をもたらすでしょう。


ビットコインの100万ドル到達は、単なる価格目標ではなく、伝統的な金融システムと暗号資産が融合する新たな時代の象徴となるかもしれません。日本がその変革の重要な触媒となるか、それとも保守的な姿勢を維持するか。その選択が、グローバルな暗号資産市場の未来を左右することになるでしょう。


Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


ビットコイン採掘からAI企業へ華麗な転身、米IREN社の株価が530%急騰した理由