2025年の暗号資産市場で、Hyperliquidというプロジェクトが注目を集めています。正確には、そのトークンの価格の動きというより、裏側で動いている仕組みが話題の中心です。
Hyperliquidは分散型デリバティブ取引所(Perp DEX)として機能しており、取引手数料の97%をHYPEトークンの買い戻しに充てています。この比率は、従来のDeFiプロジェクトと比較しても異例の高さです。
2025年8月には、プラットフォーム全体で3570億ドルという膨大なデリバティブ取引量を記録しました。これにより1億500万ドルの取引手数料が発生し、その大半がHYPEトークンの市場買い付けに使われています。6月までに、アシスタンスファンドと呼ばれる仕組みが保有するHYPEトークンは10億ドルを超えました。
この買い戻しプログラムは、単なる価格支持策ではありません。市場にトークンを再注入せず、流通量を実質的に減らす構造になっています。2025年中盤までに約2000万枚のHYPEが買い戻され、これは全流通量の約6.2%に相当します。
Perp DEX市場の爆発的拡大と競争の激化
2025年9月、Perp DEX市場は史上最高の取引量を記録しました。日次で700億ドルという数字は、多くの中央集権型取引所を凌駕する規模です。
第3四半期だけで1兆8000億ドルの取引量を達成し、これは2024年の年間取引量を上回っています。この急成長の背景には、インフラの成熟、トークンインセンティブ、最大1000倍というレバレッジ、そしてガス代の最小化があります。
しかし、新たな競合も現れています。9月17日にローンチされたAsterは、わずか一週間で市場シェアの50%近くを獲得しました。単日で360億ドルの取引量を記録し、Hyperliquidの2倍を超える規模です。
ただし、Asterに対しては懐疑的な見方もあります。トークン供給量の96%がわずか6つのウォレットに集中しているという分析結果が出ており、ウォッシュトレーディング(架空取引)の可能性が指摘されています。
一方、Hyperliquidは透明性のあるオンチェーン取引と10万人以上のアクティブトレーダーという実績を武器に、引き続き市場での存在感を維持しています。2025年2月にはHyperEVMのメインネットを立ち上げ、スマートコントラクトエコシステムへの拡張も進めています。
11月のトークンアンロックという試練
HYPEトークンが直面する最大のリスクは、2025年11月29日から始まる大規模なトークンアンロックです。
24ヶ月にわたり、約119億ドル相当のHYPEトークンがチームメンバーに段階的に配布されます。毎月約5億ドル相当のトークンが市場に流入する計算です。
さらに問題なのは、現在の買い戻しプログラムでは月間供給量の17%しか吸収できないという試算です。つまり、毎月約4億1000万ドル分の潜在的な売り圧力が残ることになります。
9月には、ある大口保有者が1億2200万ドル相当のHYPEトークンを引き出し、市場に不安が広がりました。BitMEX共同創設者のアーサー・ヘイズも、アンロックへの懸念から保有HYPEを全て売却したと報じられています。
HYPEの価格は9月中旬に史上最高値の59.29ドルを記録した後、約29%下落して42ドル台まで落ち込みました。
それでも残る希望の光
暗い材料ばかりではありません。2025年8月の取引量から生まれた手数料収入は、月次で1億500万ドルに達しました。この規模の収益が継続すれば、買い戻しプログラムは一定の効果を発揮し続けるでしょう。
また、機関投資家の関心も高まっています。BitGoのような大手カストディサービスがHyperEVMネットワークのサポートを開始し、機関資金の流入経路が整備されています。
開発者コミュニティも活発で、175以上のチームがHyperEVM上で開発を進めているとされています。第4四半期にはPaxos管理のステーブルコインUSDHのローンチも予定されており、収益の95%がHYPE買い戻しに充てられる計画です。
市場の真価が問われる局面
2025年のPerp DEX市場の成長は、一時的なバブルではありません。分散化、透明性、ユーザー中心の価値分配というDeFiの理念が具体化しつつあります。
Hyperliquidは、取引手数料の97%を再購入に充てるという大胆な設計で、この変革の最前線に立っています。しかし11月のアンロックという大きな試練が待ち構えています。
結局のところ、HYPEの成否は実際のユーザーがどれだけプラットフォームを使い続けるかにかかっています。インセンティブ目当ての一時的な利用者ではなく、本物のトレーダーに選ばれるプラットフォームになれるかどうか。
2025年の残り数ヶ月で、この問いへの答えが明らかになるでしょう。そしてその答えが、次世代DeFiの方向性を示すことになります。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。