「採掘銘柄」がAI企業に?株価が急騰した裏のカラクリ


ビットコインの価格が約65%上昇したとき、一部の暗号資産採掘企業の株価は211%という驚異的な伸びを示しました。なぜ、これほどまでにビットコイン本体の価格上昇率を大きく上回る急騰が起こったのでしょうか。


結論から先に言いますと、その理由は彼らが「単なる採掘企業」から「AIインフラ企業」へとビジネスの軸足を移しているからです。市場はもはや彼らをビットコインの価格変動に一喜一憂する存在ではなく、未来のAIを支える電源インフラ企業として再評価し始めているのです。


疑問、採掘銘柄が急に注目され始めた背景


従来のビットコイン採掘ビジネスは、その収益性がビットコインの価格に大きく依存するというリスクを抱えていました。価格が下がれば収益が悪化し、企業価値も不安定になるという構造です。


しかし、現在、アメリカのRiot PlatformsやHut 8といった主要企業が、この不安定なビジネスモデルからの脱却を図っています。彼らが目をつけたのが、莫大な電力を必要とするAIモデルのトレーニングと運用を担う「高性能コンピューティング(HPC)データセンター」事業です。


試したこと、既存のインフラをAIに転用する戦略


採掘企業が持つ最大の強みは、大量の電力を安価に、そして安定的に調達・供給するための巨大なインフラをすでに構築している点です。


AIデータセンターは、GPU(画像処理ユニット)を24時間フル稼働させるため、電力供給が生命線となります。採掘企業は、この既存の電力契約やデータセンターの敷地、冷却設備といったインフラを、AI開発企業などに貸し出すことで、ビットコインの価格に左右されない安定的な「賃貸収益」を生み出し始めました。


例えば、Hut 8は、大規模な新プロジェクトを発表し、AIインフラの構築を通じて電力容量を倍増させる計画を進めています。また、Core Scientificのような企業も、クラウドサービスホスティング契約を結ぶなど、具体的な収益の多角化を加速させています。


結果、株価に「レバレッジ効果」が加わった


このビジネスモデルの転換が評価され、株価はビットコイン本体の上昇以上に反応する「レバレッジ効果」を伴いました。


このレバレッジ効果は二重構造になっています。


  1. AI事業による安定性の向上: AIクラウドサービスの長期契約は、企業に確実なキャッシュフローをもたらし、ビットコイン価格下落時のリスクを大幅に軽減しました。

  2. ビットコイン保有による資産の爆発: 多くの採掘企業は、採掘したビットコインを財務資産として大量に保有しています。そのため、ビットコイン価格が65%上がると、採掘による売上増に加えて、保有資産の含み益も急増し、企業価値を押し上げます。


市場は、このAIへの転換がもたらす安定収益と、ビットコイン保有による資産の爆発力の両方を織り込み始め、株価の再評価につながったのです。JPモルガンも、この動きを「AI効果」と分析しています。


American Bitcoin Corp(ABTC)のように、採掘と市場でのビットコイン直接購入を組み合わせる「二重蓄積戦略」でレバレッジを最大限に引き出す企業も出てきています。採掘銘柄を分析する際は、採掘量だけでなく、保有ビットコインの量とAIインフラ事業の進捗も一緒に見る必要があります。この視点が、銘柄の真の価値を見極める重要なポイントになるでしょう。


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