世界的な大投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、2025年第3四半期のポートフォリオを大きく動かしました。主力だったアップル株の比率を大幅に減らし、代わりにグーグルの親会社であるアルファベット株を大規模に買い増したのです。これは単なる利益確定ではありません。バフェット氏が長年信じてきた「堀(Moat)」の定義を、現在のAI時代に合わせて静かに再構築している、と考えるのが正しいでしょう。
永久保有株を売却した「違和感」の正体
バークシャーがアップル株を売却したのは、アップルという企業の将来性を疑問視したからではないのですね。むしろ、その成功が理由なのです。最新の報告書によると、アップル株の保有比率はおよそ15パーセント削減されました。しかし、これはバフェット氏の代名詞とも言える「集中投資」戦略の裏返しなのですよ。
株価が長期間にわたって高騰し続けた結果、アップル株がバークシャーの全資産に占める割合は過度に大きくなっていました。これは、分散投資を避けつつも、特定の銘柄に依存しすぎるリスクを嫌うバフェット氏の哲学に反します。彼にとって、アップル株の売却は「集中投資の成功によって生じたリスクを管理する」ための、極めて冷静なリバランス作業だったと見ています。
アルファベット株で埋める「未来の堀」:AI時代への布石
一方、バフェット氏がアルファベット株を新たにポートフォリオに組み入れたのは、AIとクラウドコンピューティングという未来の巨大な「堀」を高く評価したためです。過去、彼はグーグルの初期段階で投資機会を逃したことを後悔していると認めています。今回の約43億ドルという大型投資は、その反省を活かした動きと言えますね。
アルファベットは、世界最強の検索エンジンという強固なプラットフォームを持っています。これに加えて、彼らのクラウド事業や生成AI技術への投資は目覚ましいものがあります。他の大手テック企業と比べた相対的な株価の割安感も魅力的でした。つまり、アップルが持つ「ブランド」という堀から、アルファベットが持つ「データと技術」という未来の堀へと、静かに重心を移しているということなのですよ。
私たちが学ぶべき「集中投資」の柔軟性
この一連の動きから、私たち個人投資家が学ぶべきは、集中投資とリスク管理のバランスです。バフェット氏は、企業の本質的な価値が変わらない限り保有し続けるという原則を持ちながらも、市場の状況や資産配分の歪みに対しては驚くほど柔軟に対応しています。
これは、自分の持っている「最高の銘柄」でさえ、ポートフォリオ全体のリスクを増大させるなら調整の対象になる、という規律の徹底を示しています。私たちは、好きな銘柄に固執するのではなく、客観的な視点から自分の資産構成を見直し、成長性が高く割安な次の柱を探し続ける必要があるのですね。
こういった視点で、ご自身のポートフォリオを一度眺めてみてはいかがでしょうか。