うちの愛猫がシャンプーの後、いつも以上に毛づくろいが長引いているのを見ると「冷えたら大変。早く乾かさなきゃ」と誰もが思うものです。しかし、猫が濡れた体を舐め続ける行動は、単なる体温調節だけではない、もっと深刻な心のサインとして捉えるべきかもしれません。
猫はもともと、起きている時間の30%から最大50%もの時間をグルーミングに費やす習性があります。これは清潔維持や体温管理のためですが、入浴のような急激な環境変化は、猫のストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を強く促します。この高まった不安や緊張を抑え込むため、猫はグルーミングによってエンドルフィンという快感物質を自ら分泌させようとしているのです。
過剰なグルーミングを不安行動と判断する明確な基準
正常なグルーミングとストレス性の行動を見分けるには、客観的な基準が必要です。単に長いだけでなく、次のような傾向が見られる場合は「オーバーグルーミング」と判断します。
-
持続時間の超過:グルーミングが20分以上継続している
-
特定部位への集中:脇腹、下腹部、太ももの内側など、特定の箇所だけを執拗に舐め続けている
-
物理的な影響:毛が薄くなったり、ちぎれて脱毛している、あるいは皮膚が赤く炎症を起こしている
オーバーグルーミングは心のSOSであると同時に、心因性脱毛や皮膚感染につながる行動上の問題です。
最優先事項、獣医師による医学的診断
このような強迫的な行動が観察された場合、まず考えるべきはアレルギーや寄生虫といった皮膚疾患ではありません。特に、特発性膀胱炎など、下腹部に不快感や痛みを生じる病気が、その部位を舐め壊す原因になっていることがあります。
行動療法に入る前に、痛みや病気が原因ではないことを獣医師の専門的な診断によって排除することが重要です。単なる毛づくろいではなく、愛猫の精神的な健康に赤信号が灯っていると洞察してください。
ストレス性グルーミングを軽減する三つの行動計画
愛猫の不安を和らげ、過度なグルーミング行動を抑えるための具体的な実行ガイドです。
-
環境の安定化と安心できる香りの活用
-
お風呂の前後など、ストレスがかかる状況では静かで隠れられる場所を用意します。
-
合成フェロモンのディフューザーを猫の生活空間に設置し、安心感を高める環境を整えます。
-
-
インタラクティブな遊びによるエネルギーの健全な発散
-
1回15分を1日2回以上の頻度で、猫じゃらしなどを使ったインタラクティブな遊びを取り入れます。
-
遊びを通じて狩猟本能を満たすことは、溜まったストレスを健康的な方法で発散させる代替手段になります。
-
-
定期的なブラッシングで代替行動を誘導
-
保護者が柔らかいブラシで定期的に全身を優しくブラッシングする時間を設けます。
-
これは猫にとってポジティブな身体接触となり、自ら過剰に舐める役割を人間のケアに置き換える手助けとなります。
-
これらのステップを試しても改善が見られない場合は、ぜひ猫の行動記録をつけて、獣医行動学の専門家に相談してみてください。