一年中抜ける猫の毛、その原因は「照明」にあった?

窓からの自然光と室内のランプ(人工照明)が当たるベッドの上で穏やかに横たわる三毛猫。猫の背中に降り注ぐ光の粒子が見える。


「うちの猫、換毛期じゃないのに一年中、毛が抜けている気がする」と感じたことはありませんか。実は、この季節を問わない抜け毛の増加は、単純に室温が高いからという理由だけではないかもしれません。


科学者たちの新しい見解によると、猫の毛の生え変わり(換毛)の周期を調整する最も重要な要素は、日光のサイクル、つまり「光の当たる時間(光周期)」だそうです。特に、私たちが家で使う人工の照明が、猫の体のリズムを狂わせ、抜け毛のパターンを変えてしまっていると考えられています。


普段の照明の使い方を少し見直すだけで、愛猫の過度な抜け毛を減らす助けになるかもしれません。


光の周期が猫の換毛に大きな影響を与える


野生の猫は、本来、昼の長さが変わるのに合わせて年に二回、春と秋に大々的な換毛を行います。昼が長くなる春には保温性の高い冬毛を脱ぎ、昼が短くなる秋には厚い冬毛に生え変わるという、自然の光周期性に体が合わせられています。


ところが、室内で暮らす猫の生活環境はとても均一です。室温は一定に保たれ、特に夜でも照明がつくことで、猫が「夜だ」と認識する時間が自然界より短くなります。この一定の温度と、乱れた照明のサイクルが、猫のホルモンバランスを崩し、一年中だらだらと毛が抜け続ける状態を作ってしまうのです。


人工照明が毛の成長サイクルを乱す仕組み


猫の毛の成長をコントロールするカギは、メラトニンというホルモンが握っています。メラトニンは、暗くなると分泌されて睡眠や休息を促すだけでなく、毛の成長サイクルにも大切な役割を果たしています。夜が長くなるとメラトニンの分泌量が増え、それが厚い冬毛の成長を促すサインになります。


しかし、夜遅くまで強い室内の照明を使っていると、猫の脳は「まだ夜ではない」と錯覚します。光にさらされ続けることでメラトニンの分泌が抑えられてしまい、毛が成長する期間と、休止して抜ける期間の切り替えが不規則になってしまうのです。つまり、猫の毛が休むことなく不要に抜け続ける現象は、室内照明による生体時計の乱れから来ている、と考えることができます。


抜け毛を減らすための3つの生活習慣


過剰な抜け毛を抑えるためには、家の中の照明環境を改善することが、最も直接的で効果的な対策になります。猫の換毛サイクルを生体リズムに合わせるため、「人工的に光周期を作ってあげる」ことがポイントです。いますぐ試せるシンプルな3つのステップを紹介します。


  1. 夜間の明るさを最小限にする:夜の8時を過ぎたら、猫がいる場所の照明をできるだけ暗く調整してみてください。メラトニンがしっかり分泌されるよう、間接照明やワット数の低い電球だけを使うのがおすすめです。

  2. 規則的な就寝時間を作る:毎日決まった時間、たとえば夜7時半にはすべての明るい照明を消し、暗い環境に切り替える習慣を作りましょう。一貫した光のサイクルで、猫の生体時計を安定させることが重要です。

  3. 自然光に当たる時間を確保する:昼間は窓を開けたり、窓際で過ごさせたりして、自然光に十分当たる時間を確保してください。自然光は夜との区別をはっきりさせ、生体リズムを正常化するのを助けます。


猫の抜け毛の悩みは、獣医学的な治療の前に、私たちが意識して変えられる自宅の環境、特に光の使い方に答えがあるかもしれません。照明を変えるだけで、猫の健康的な換毛サイクルを取り戻せる可能性がありますから、今日から照明スイッチの使い方に少しだけ気を配ってみてはいかがでしょうか。