
投資信託法の改正、税制の整理、カストディ基準の策定、市場インフラの整備、商品の届け出審査。この5つを見る限り、どれも完了したとは言えない段階に見えます。それなのに法改正の報道は、承認が近いという期待だけを一人歩きさせているように感じます。
規制の進展と市場アクセスは別物です。この業界を見てきた中で何度も目にしてきたパターンですが、今回も同じ構図です。制度の見直しが始まったという報道を承認が近いという意味で受け取ると、読み方を間違えることになります。実際には何合目まで来ているのか。まず必要な手続きを数え上げてみます。
承認までに必要な5つの制度手続き
承認までの5つの関門
Source: 記事内容に基づく編集部作成
日本が暗号資産の法制度を見直す動きに入ったのは事実です。ただ、見直しの発表イコール制度完成ではありません。今回必要とされる作業は想像以上に多岐にわたります。
- 投資信託法の改正手続き
- 暗号資産にかかる税制の整理
- カストディ基準の策定
- 市場インフラの整備
- 商品の届け出審査
この5つが全部終わって、ようやく承認の入り口に立てます。現時点でこの中のどれか一つでも完了したと確認できるものは見当たりません。手続きが止まっているわけではありませんが、だからこそ承認が近いという報道の読み方には注意が必要です。実際、この5つが未完のまま先に動き出している企業がすでにあります。
規制の過渡期に先行して動く企業群
規制の過渡期における立場の違い
| プレイヤー | 現在の動き | 承認との関係 |
|---|---|---|
| 国内取引所 (bitFlyer等) |
制度変更が進めば恩恵を受けやすい | 恩恵は承認後 |
| 大手証券会社 | 他国ETF事例から商品設計を先取り | 準備は投資、未回収 |
| 規制当局 | 制度を作る側 | 承認を急ぐ立場ではない |
| 個人投資家 | 制度が固まるまで蚊帳の外 | 承認まで恩恵なし |
Source: 記事内容に基づく編集部作成
こういう規制の過渡期には、決まって大手の証券会社や資産運用会社が先に準備を始めます。これ自体は悪いことではありません。ただ、準備が始まったという報道を承認が近いという意味で受け取ると、読み方を間違えてしまいます。
bitFlyerやCoincheckのような国内の暗号資産取引所は、制度変更が進めば恩恵を受けやすい立場に立ちます。大手証券は商品設計のノウハウを他国のETF事例から先取りできます。規制当局は制度を作る側であり、承認を急ぐ側ではありません。一般の個人投資家は、制度が固まるまで蚊帳の外に置かれがちです。
準備を進める企業は、早く動くほど後発に対して優位に立てます。これは当然の経済合理性です。ただその優位性は、承認が実際に下りるまでは利益に変換されません。準備は投資であり、まだ回収ではない。このセクションの意味はその一点に尽きます。企業の動きと承認のタイミングがずれるように、報道の言葉そのものにもずれが生じやすい場所があります。次はその言葉の問題です。
見出しの動詞一つが生む投資家の誤解
言葉と税制、見落としやすい落差の正体
| 論点 | 現状 | 投資家への影響度 |
|---|---|---|
| 見出しの動詞 (動いている vs 承認した) |
混同されやすい | 高 |
| 資金配分の計画 | 承認前提で組むと危険 | 中高 |
| 現行の税制 (雑所得・総合課税) |
未変更 | 高 |
| 決済サービス経由の利用 (PayPay等) |
既に拡大中 | 低 |
Source: 記事内容に基づく編集部作成
ニュースの見出しを見ていて気になるのは、いつも言葉の選び方です。日本がビットコインETFに向けて動いているという表現は正確です。しかし日本がビットコインETFを承認したという表現になると、それは誤りになります。この二つの文はたった数文字しか違いませんが、意味する中身は全く別のものです。
以前、似たニュースで早合点した経験があります。ある国の規制当局が検討を始めたという報道を見て、承認が近いと見立てたことがありました。実際には、承認までには当初の見立てよりずいぶん長い時間がかかりました。その反省から、今は規制報道を見るとき必ず動詞を確認する習慣がついています。動いている、検討している、準備しているという言葉と、承認した、許可したという言葉を混同しないようにしています。
この区別を怠ると、個人の資産形成の計画にまで影響が出ます。ETFが使えるようになる前提で資金配分を組んでしまうと、承認が遅れた分だけ計画全体がずれます。生活費の管理と同じで、入ってくる予定のお金を先に使う計画は危ういものです。承認までの遅れは、思っている以上に長引くことがあります。言葉の読み違いが計画のずれにつながるように、税制の扱いを見落とす場合にも同じことが起こります。
生活者の資産形成における税制の論点
普段の生活の中でビットコインに触れている人の多くは、bitFlyerやGMOコインでの購入、またはPayPayのような決済サービスを通じた利用が中心だと思います。コンビニのATMで暗号資産を直接使うことはまだできませんが、決済サービス経由で資産の一部を暗号資産に振り分ける動きは徐々に広がっています。この層にとって、ETFの話は少し遠い話に聞こえるかもしれません。
国内の暗号資産保有者は増加傾向にあるようです。bitFlyerやCoincheckといった取引所経由の購入が、今も主要な入口です。ETFが実現すれば証券口座からの購入が可能になりますし、税制面でも株式等と同じ扱いになるかどうかが今後の論点になってきます。
税制の扱いが変わるかどうかは、ETFの承認そのものより生活者にとって重要な論点かもしれません。今の暗号資産の利益は雑所得として総合課税の対象になり、高い税率がかかる場合があります。ここが変わらない限り、ETFという入口だけ整っても資産形成の道具としての魅力は半分しか引き出されません。承認のニュースだけを追いかけていると、この税制の論点が見落とされがちです。
投資信託法の改正、税制の整理、カストディ基準の策定、市場インフラの整備、商品の届け出審査。この5つのうち何合目まで来ているかを、見出しの動詞ではなく手続きの進捗そのもので確認する。それができれば、承認が近いという期待に資産計画を預けてしまう事態は避けられます。承認の瞬間だけを待つのではなく、その手前にある手続きの進み方を見ておくこと。それが自分の資産計画を守ることに直結します。