「ESS」が鍵? AIが電気を使いすぎる問題、その裏側で起きていること


最近、AIがすごく身近になってきましたよね。画像をつくったり、文章をまとめたり。でも、ふと「これ、電気はどれくらい使っているんだろう」と気になったんです。


調べてみたら、想像していた以上に大変なことが、私たちの見えないところで起きているようでした。


AIって、どれくらい電気を使ってる?


AIの頭脳にあたるデータセンター。ここが今、とんでもない量の電気を必要としています。国際エネルギー機関(IEA)によると、世界中のデータセンターが使う電気の量は、2022年から2026年までのたった4年間で2倍以上になるかもしれない、と言われています。


AIが賢くなればなるほど、もっと電気が必要になる。ある予測では、2030年にはデータセンターの電力需要が2023年と比べて160%以上も増える可能性があるそうです。


もしもAIが止まったら?


もし、このデータセンターが止まったらどうなるでしょう。 AIの学習には高性能なサーバーが使われていて、従来の何倍、何十倍も電気を使います。もし訓練中にサーバーが止まってしまうと、何か月もの作業が全部やり直しになることもあるとか。


ある調査では、企業がシステムダウン(停止)によって失うコストは、1時間あたり100万ドル、日本円にして1億円以上にもなる、というデータもありました。これはもう、ただ事ではありません。


そこで「ESS」の出番です


そこで今、とても重要になっているのが「ESS」と呼ばれるものです。 エネルギー・ストレージ・システム、日本語でいうと「エネルギー貯蔵装置」、つまり高性能な蓄電池のことです。


これまでは、停電したときに少しの間だけ電気を供給する「予備電源」くらいのイメージでした。 でもAIの時代には、その役割がまったく変わってきています。


ESSがAIを支える「大事な役割」


ESSは今、電気を「安定させる」ために必須のインフラになっています。AIサーバーが常に大量の電気を使い続けても、電力が不安定にならないよう支える大事な役割です。


それに、電気代を節約するためにも使われます。 電気料金が安い夜のあいだに電気をためておいて、料金が高い昼間に使う。こうすることで、データセンターの莫大な運営コストを少しでも抑えるわけです。


また、太陽光や風力といった再生可能エネルギーとも相性がいいんです。 これらのエネルギーは天気に左右されて不安定ですが、ESSがあれば、発電しすぎた電気を貯めておいて、足りないときに使えます。


世界も本気で動き出した


世界中の国々も、この電力の確保に本気です。 アメリカでは「国家エネルギー非常事態」を宣言し、920億ドルもの投資計画を発表しました。原子力や天然ガス、再生可能エネルギー、そしてESS、使えるものは全部使う「ハイブリッド方式」で対応しようとしています。


中国は「東数西算」というプロジェクトを進めています。これは、再生可能エネルギーが豊富な西の地域でデータ処理を行おう、という考え方です。


じゃあ、日本はどうするの?


日本ももちろん、他人事ではありません。 AIや半導体工場の増加で、これまでの予測をくつがえして電力需要が増える見通しになっています。 そこで、政府もデータセンターを東京などの大都市圏から地方へ分散させようとしています。


たとえば北海道は、気候が涼しくてサーバーの冷却コストを抑えられるうえ、再生可能エネルギーも豊富です。九州も、太陽光や地熱といった再生可能エネルギーに強みがあります。電気が豊富な場所にデータセンターを移していく流れです。


AIの進化って本当にすごいなと思う半面、その土台を支える電力がこんなにギリギリの状況だとは思いませんでした。 便利なサービスを使うとき、その裏側で動いているエネルギーのことも、これからは少し気にしておかないといけない時代なのかもしれませんね。


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