最近、「毎月分配金」とか「高利回り」とうたうETF(上場投資信託)をよく見かけます。その中でも「カバードコール」という戦略を使っている商品が気になっていました。
株価があまり動かなくても、どうして毎月お金を分配できるんだろう。そんなうまい話があるのかな、と。何か見落としていることがあるかもしれないと思い、その仕組みを少し調べてみることにしました。
分配金の源泉は「権利」の売却益
調べてわかったのは、カバードコールが「株を持つ」ことと「ある権利を売る」ことを組み合わせた戦略だということです。
まず、ETFは投資先となる株(例えば米国の有名ハイテク株など)を実際に保有します。ここまでは普通の株式ETFと同じです。
違うのはここからで、同時に「その株を、将来の特定の日に、決まった価格で買う権利(コールオプション)」を他の投資家に売るんです。
この「権利」を売ることで、手数料のようなもの(オプションプレミアムと呼ばれます)を受け取ります。この手数料収入が、私たちが受け取る高い分配金の主な源泉になっているんですね。
株価が動かなくても利益が出る理由
この仕組みの面白いところは、株価が横ばいでも利益が出ることです。
株価が上がっても下がっても、この「権利」を売り続ける限り、毎月手数料が入ってきます。だから、株価自体がパッとしなくても、ETFは安定して分配金を出すことができるわけです。
相場が少し下落する場面でも、この手数料収入がクッションの役割を果たしてくれます。株価が下がった分の損失を、手数料収入が一部カバーしてくれるイメージですね。
知っておくべき大きな注意点
ただ、もちろん良いことばかりではありません。一番の注意点は、株価が大きく上昇する場面です。
「決まった価格で買う権利」を売ってしまっているため、もし株価がその価格を超えて急上昇しても、利益は「決まった価格」までしか得られません。大きな値上がり益を取り逃がしてしまうことになるんです。
つまり、カバードコール戦略は、「株価が急上昇した時の大きな利益をあきらめる」代わりに、「毎月の安定した手数料収入を選ぶ」という、一種のトレードオフなんですね。
そして、もし株価が急落した場合は、普通に株を持っているのと同じように損失が出ます。手数料収入だけではカバーしきれないほど下落することもあり得ます。元本が保証されているわけでは全くありません。
税金はどうなる?
日本に住んでいる場合、ETFから受け取る分配金は基本的に配当所得として扱われ、税金がかかります。
もし海外(例えば米国)のETFに投資している場合は、まず現地で税金が引かれ、その後日本でも課税されます。ただ、これは確定申告で「外国税額控除」という仕組みを使えば、二重課税分の一部または全部を取り戻せる場合があります。
このあたりは少し手続きが必要になるので、海外ETFを検討するなら覚えておきたいポイントです。
わたしなりの使い方
調べてみた感想としては、「これ一本で資産形成OK」という万能な商品ではないな、という印象です。
むしろ、持っている資産全体の一部としてうまく使うのが良さそうです。例えば、資産の10%や20%くらいをカバードコールETFにしておき、そこから毎月の安定したキャッシュフロー(お小遣い)をもらう。そして残りの資産は、しっかり成長を目指す別の投資(インデックスファンドなど)に任せる、といった使い分けですね。
特に、これから資産を大きく増やしたい時期というよりは、ある程度まとまった資産ができて、そこから毎月の生活費などを安定的に得たい、という段階にいる人に向いているのかもしれません。
高い利回りという言葉だけを見ると魅力的に映りますが、その裏側にある仕組みとトレードオフを理解したうえで、自分の今の状況や投資スタイルに合っているかを考えてみるのが良さそうですね。