エヌビディアの株価は「バブル」なのか、それとも「構造的成長」なのか


エヌビディアの時価総額が4兆ドルの大台に乗せた。2025年10月現在、アナリストの平均目標株価は216ドルだ。この数字を見て「買い」と判断するか、「やりすぎ」と警戒するか。市場は今、真っ二つに割れている。


OpenAIへの最大1000億ドル投資が発表された直後、「循環取引では」という批判が市場を駆け巡った。エヌビディアが投じた資金がOpenAIのGPU購入に充てられ、そのまま自社の売上に戻ってくる。これはドットコムバブル期の「ベンダーファイナンシング」と同じではないか。モーニングスターのアナリストが「1年後にバブルが崩壊するとすれば、今回の取引がその初期の目印かもしれない」と指摘したのは、単なる比喩ではない。


S&P500のPERは22~23倍。1999年のドットコムバブル崩壊直前が25倍だったことを考えれば、確かに警戒水域に近い。しかし今回は違う、という声も強い。


バンク・オブ・アメリカのストラテジストは「当時の企業の多くは赤字だったが、今は違う」と強調する。マグニフィセント・セブン(M7)の純利益成長率は、2023年34%、2024年36%、2025年21%と、実際の収益を積み上げている。S&P500全体の10%成長の倍以上だ。これは数字のマジックではなく、現金が生まれている証拠だ。


CFOの半数近くがAI投資で実質的なROIを経験したと答えた調査もある。クラウド、自動運転、生成AIは既に日常業務を変え始めている。つまり、AIはまだ「期待」だけではなく、「実利」を生み出しつつある段階にある。


それでも、成長率の鈍化は見逃せない。エヌビディアの四半期売上増加率は56%と、9四半期ぶりの低水準だ。シーキングアルファは「AI需要が冷却し始めている可能性がある」と分析した。


もう一つの懸念材料は中国だ。モルガン・スタンレーは中国のAIチップ自給率が2023年の34%から2027年には82%に急上昇すると予測している。ファーウェイ、アリババ、テンセントが内製化を進めており、エヌビディアの中国市場依存は大きなリスクとなりつつある。


一方で、ジェンセン・ファンCEOは「私たちは今、新しい産業革命の起点にいる」と言い切る。次世代チップ「ブラックウェル」への需要は爆発的で、マイクロソフトやグーグルなどが数千億ドル規模の追加投資を予告している。米政府がUAEへのAIチップ輸出を承認し、5GW規模のデータセンタープロジェクトを支援したのも、エヌビディアにとっては追い風だ。


ここ数カ月の動きを見ると、株価は一進一退を繰り返している。四半期決算発表後に4.2%下落したのは、期待値が高すぎた反動かもしれない。それでも年初来では43%の上昇だ。


今後2~3四半期の実績がすべてを決める。ブラックウェルの出荷が予想を上回れば成長論の勝利。逆に中国市場からの撤退が加速し、成長率が一桁台に落ち込めばバブル論が現実になる。


バリュエーション的には確かに高い。だが収益性という土台がある限り、すぐに崩壊するとは考えにくい。ただし過信は禁物だ。数字を丁寧に追い、変化の兆しを見逃さないことが今、最も必要とされている姿勢ではないだろうか。


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