金利引き下げなのにビットコインが停滞? 60日の時差を見落としていませんか

金融緩和で流動性が生まれるも、それがビットコインの価格に反映されるまでに60日程度の時間差があることを示す、メカニカルな時計と通貨記号、そしてビットコインシンボルのCGイメージ。


金融政策の緩和が進んでいるにもかかわらず、ビットコイン(BTC)の価格が目立った動きなく横ばいで推移していることに、違和感を覚える投資家は多いでしょう。しかし、この現象の鍵は、市場に流動性が供給されてから実際に価格に影響が出るまでには時間がかかるという点にあるのです。過去のデータを見ると、世界の通貨供給量(M2)の増加がビットコイン価格に作用するまでには、およそ60日、つまり2〜2.5ヶ月のタイムラグがあるという重要なパターンが見て取れます。


金利引き下げがビットコインに届くまでのプロセス


中央銀行による金利の引き下げは、市場にお金を流し込む金融緩和政策のスタートを意味します。金利が下がると、銀行の融資金利も下がり、企業や家計が借り入れを増やします。結果として、世の中に流通するお金の量が増えることになります。この増えたお金の量を測る代表的な指標がM2通貨量です。


  • M2通貨量は、現金だけでなく、いつでも現金として使える預金なども含めた広範な通貨指標です。

  • M2が増えれば、株式や不動産だけでなく、ビットコインのようなリスク資産にも流れ込む可能性のある流動性が高まります。

  • 特にビットコインは発行上限が2,100万枚と決まっているため、法定通貨の供給増加による価値の希薄化を防ぐ手段として注目され、需要が高まりやすい傾向があります。


価格上昇を左右する60日間のタイムラグ


世界の金融緩和策が発表されたり、M2通貨量が増加し始めたりしても、この流動性がすぐにビットコイン市場に流れ込み、価格を押し上げるわけではありません。市場がその効果を織り込むまでには、一定の期間が必要なのです。


  • 世界のM2の変化とBTC価格の連動性は、歴史的に見て非常に明確に確認されています。

  • 過去の推移を分析すると、M2通貨量が目立って増加し始めた時点から約60日後に、ビットコイン価格が本格的な上昇トレンドに入るというパターンが繰り返されてきました。


この時差は、投資家が増えた流動性をもとに資産配分を調整したり、機関投資家が新しい金融環境に合わせて投資決定を下したりするのにかかる時間だと考えられます。最近の金利引き下げの兆候やM2の増加が、すぐさまビットコイン価格に反映されないのは、まさにこの60日間の流動性効果の遅れが原因だと分析できるでしょう。


横ばい相場の中で読み取るべきサイン


現在のビットコインの横ばい相場は、流動性効果を待つ一種の調整期間と捉えるのが自然です。しかし、長期的な視点で見ると強気相場への本格的な移行を示唆する、いくつかのポジティブなサインも同時に現れています。


  • 短期保有者による売り圧の沈静化: 価格調整によって短期保有者の含み損は増えましたが、これは大規模なレバレッジ解消の最終局面であるという見方もあります。

  • 機関投資家の継続的な買い: ビットコイン現物ETFが承認されて以来、機関投資家による資金流入は着実に続いています。これは市場の構造的な基盤を強化しています。


したがって、金利引き下げという巨大な流動性の波が、実際にビットコイン市場に押し寄せるまでには、もう少し時間がかかるかもしれません。現在の静けさは、相場が大きく動く前の準備期間である可能性を考慮に入れると良いでしょう。