最近、世界の投資市場で資産価格が大きく揺れ動いているのを見て、「まさか、あのAI関連株の調整が、自分の持っているビットコインにまで影響するなんて」と戸惑っているかたも多いのではないでしょうか。この同時多発的な下落は、単なる市場の気まぐれではありません。アメリカの中央銀行であるFRBの利下げ期待が後退したことと、市場を牽引してきたAI分野の主要銘柄に対する過熱感、この二つの大きな流れが合わさって起きた現象だと見ています。
利下げ期待の後退が「高いもの」を敬遠させる
市場が年内に金利が下がると期待していた時期もありましたが、アメリカの景気が強すぎることやFRBメンバーの慎重な発言が続き、その期待は大きくしぼんでしまいました。金利が高い状態が長く続くと、お金を借りる企業のコストは上がり、将来の利益を今の価値に引き直したときの魅力が薄れてしまいます。特に、まだ利益は少ないけれど将来の成長に期待が集まっているAI関連株や、元々ボラティリティが高い暗号資産のような「ハイリスク資産」にとって、これは大きな向かい風です。安全な米ドル建ての資産が魅力的に見えるため、投資家は自然とリスクの高い資産から資金を引き揚げる動きを見せています。
AIブームと暗号資産の「意外な連動」
AIブームを牽引してきた一部の巨大テクノロジー企業株に対し、一時的に「バブルではないか」という警戒感が強まりました。これらの銘柄が少しでも調整に入ると、投資家心理は一気に冷え込みます。実は、AI関連株と暗号資産は、投資家の「リスクを取ろう」という気持ちに強く連動しています。
最近の分析では、暗号資産市場でレバレッジ(借り入れ)を使いすぎた投資家が、急な下落で損失を埋めるために、比較的換金しやすいAI関連の優良株を売却したという指摘もあります。つまり、片方の市場で起きた不安が、もう一方の市場に伝染する構造が働いたということです。これは、私たちの資産が、想像以上に複雑な「マクロ経済の風」にさらされている証拠だと言えます。
今の相場で「少し安心できる」投資の考え方
このような不確実性の高い環境では、日々の価格の上下に一喜一憂するのではなく、全体の流れを見据えることが大切です。
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金利上昇局面での安全策: 長期金利が上がりやすい環境では、無理にハイリスク資産の比率を高めるよりも、現金の比率を増やしたり、金(ゴールド)のような伝統的な安全資産をポートフォリオに組み入れたりするほうが、精神的にも安定します。
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技術の進化は止まらない: AI技術そのものの成長は、短期的な株価の調整に関わらず続いていきます。もしAI関連株の調整が深まる局面があれば、それは将来に向けた慎重な買い場を探る機会かもしれません。
市場の動向はFRBの発言一つで変わります。今後のアメリカの経済指標(雇用や物価のデータ)に注意を払いながら、焦らず自分の資産配分を見直してみてください。