最近、円キャリー・トレードの状況が大きく変わってきています。今までのキャリートレードは、低い日本の金利でお金を借りて、金利の高い外国の資産に投資し、その差額で儲けるやり方が基本でした。しかし、今は日本の金利の動きと世界経済の不安定さが重なり、この「儲かる仕組み」が崩れ始めています。
現在の2025年11月、日本の10年物国債の金利は数年ぶりの高水準を記録するなど、上昇傾向にあります。これは、円を借りる際のコストが、以前のように極端に安くはないことを意味します。もし、日本で金利の逆転現象が起きたり、日本銀行が金融政策を変える可能性が高まると、キャリートレードに投資している人たちは、これまでとは違う、もっと複雑な生き残り方を考えなければなりません。
円安なのに金利が上がる矛盾
これまでは円安であることが、キャリートレードの前提でした。安く借りて高く稼ぐのがポイントだったからです。ところが、最近の日本の国債金利上昇は、日銀が超緩和策を終わりにして、金融引き締めに向かうかもしれないという市場の予想が影響しています。
この金利上昇は、本来なら円の価値を上げる、つまり円高に繋がる要因です。もし投資家が、円安の時に借りた円を返済しなければならない時、円高になっていたら、高くなった円を買い戻して返すことになるため、為替の変動で大きな損をする可能性があります。円安が続いているのに、日本国内の金利が急に上がるという、キャリートレードの土台を揺るがす「逆説的な状況」が生まれているわけです。
キャリートレードの清算が為替市場に与える影響
金利が急に上がって、借りるコストが高くなると、投資家は海外の資産を売って円を返す「清算」の行動をとります。この動きは、世界の外国為替市場に無視できない影響を与えます。
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円高を呼ぶ:投資していたお金が日本に戻るため、円を買う需要が一気に高まります。これは一時的に円の価値を急激に上げることがあります。
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投資先市場の不安定化:円で資金を調達していた国々、例えば株式や債券市場から資金が流出する可能性があります。その結果、それらの国の為替レートが大きく動き、市場が不安定になる恐れがあります。
特に、為替リスクのヘッジ(回避策)をせずに円を借りていた投資家は、金利による損失と為替差損の両方を抱える「二重の苦しみ」に見舞われるかもしれません。
新しい視点と対応のヒント
これからの投資家は、単に金利差だけを見ていた過去のやり方から離れて、「金利と為替の逆転」という状況を深く理解した上で、新しいアプローチを取る必要があります。
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変動管理の重要性が増す:円安傾向が続いても、日本の金利変化一つで円高に急変するリスクが高まっています。少しコストがかかっても、為替ヘッジを行い、手持ちの資産の安全性を高めることが賢明です。
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日本の経済指標に注目する:日銀のイールドカーブ・コントロール(金利操作)政策が変わる可能性や、物価上昇率などの主要な経済の動きを細かくチェックしましょう。金融政策の変更は、キャリートレードの清算を始める引き金になり得ます。
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短期的な考え方を避ける:今の状況は、長期的な変化の始まりかもしれません。短期的な金利差で利益を狙うのではなく、金融政策がどちらに向かうかを予測し、慎重に投資を決めることが求められます。
円キャリートレードは、もはや単純なものではありません。金利逆転という予想外の事態に直面した投資家にとって、リスク管理こそが最も大切な戦略になるでしょう。