ビットコインETFにお金が流れ込めば価格が上がる。それは確かです。でも2025年10月時点で注目すべきは、価格の上昇そのものではありません。市場に参加する人たちが変わり、取引の方法そのものが別物になっています。
米国では2024年1月のETF解禁以降、構造的な変化が起きています。日本ではまだETFは承認されていませんが、この変化は無視できません。
数字が示す構造の転換
2025年10月第1週、米国のビットコイン現物ETFには32億4000万ドルの純流入がありました。記録上2番目に大きな週次流入額です。
ブラックロックのIBITは運用規模が1000億ドル(約15兆円)に迫っており、手数料を0.25%に抑えつつ年2億4000万ドル超の収入を上げています。投入から2年に満たないETFとしては異例の実績です。
ビットコイン価格は2025年10月に史上最高値となる12万5000ドル超まで急騰しました。
ETF資金が動かす価格メカニズム
ETF資金が入ると何が起きるか。承認参加者が現物でビットコインを買い付け、それを基にETF株式を生成します。この過程でビットコインは取引所から抜け出し、ETFの保管庫へ移ります。
市場に出回るビットコインが減る。それが価格を押し上げる圧力になります。ただし、ETF流入が必ず価格上昇に直結するわけではありません。資金が逆流すれば調整圧力が働きます。
取引所の力関係が変わった
以前は海外取引所と大口投資家が価格を決めていました。今は規制された米国・欧州の取引所が中心です。
コインベースやビットスタンプといった取引所が主要ETFの保管窓口となり、影響力を増しています。CME先物市場も価格形成の核として機能しています。機関投資家はCME先物でヘッジしながらETF現物を買います。
流動性の改善と取引コストの低下
ETF登場後、ビットコイン市場の流動性が目に見えて良くなりました。特に米国取引時間の午後3〜4時に取引が集中します。ETFの純資産価値計算のタイミングだからです。
売買の注文が入る厚みも増しています。スプレッドは狭まり、市場参加者の取引コストは下がりました。
機関マネーが主役に
従来は大口の個人投資家の短期売買が相場を揺らしていました。ETF経由で機関資金が継続的に入るようになり、主導権が移りました。
機関投資家は長期保有です。年金基金や証券口座を通じた投資が多く、ETFに入ったビットコインは簡単に市場へ戻りません。これが価格の安定に寄与しています。
金利と地政学リスクとの連動
モルガン・スタンレーは2025年10月1日、リスクプロファイルに応じた仮想通貨への最大4%の資金配分を提案しました。この動きは約2兆ドル(約305兆円)を運用する1万6000人のアドバイザーに提供されます。
金利が下がれば流動性が増え、リスク資産であるビットコインETFに資金が向かいます。逆に金利が上がれば安全資産へ移動します。地政学リスクも変数です。
日本の状況と今後の展望
2025年10月時点で、日本ではビットコインETFは承認されていません。
金融庁は2025年7月末に暗号資産に関するワーキンググループの第1回会合を開催し、暗号資産を資金決済法から金融商品取引法の規制枠組みに移行させる方向で検討を開始しました。2026年の通常国会で改正を目指しています。
SBIホールディングスは国内での上場を視野に入れてETF開発を進めており、制度が整い次第、具体的な商品化に踏み切る構えです。
日本でETFが承認されれば、証券口座から手軽に投資できるようになります。保管の手間やセキュリティ負担が減り、初心者でも参入しやすくなるでしょう。
ただし管理手数料がかかり、ETF価格と現物価格の乖離も起こり得ます。メリットとリスクの両方を理解しておくことが必要です。
単純な買い圧力を超えて
ETFの資金流入と価格の関係は、単純な足し算ではありません。流入が増えれば価格が上がる、という1次元の話ではなく、市場参加者の顔ぶれ、取引所の勢力図、価格決定の仕組み、流動性の構造まで、すべてが変わりつつあります。
2024年1月のETF解禁は、ビットコインが投機市場から成熟した資産市場へ移行する転換点でした。個人と大口投資家中心の世界から、機関投資家と伝統的金融が主導する世界へ。
この変化は、ビットコインをポートフォリオの分散手段、インフレヘッジ資産として位置づける流れを強めています。規制の不確実性や市場変動リスクは残りますが、ETFが作り出した構造変化は後戻りしません。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。