アップルが、eSIMだけを搭載した「iPhone Air」を、ついに中国で発売するそうです。なんだか遠い国の話のようですが、実はこれ、私たちが日本で使っている物理的なSIMカードが、もうすぐ過去のものになるかもしれない、というサインなのかもしれません。
なぜ今、中国で?
これまで中国では、セキュリティなどを理由にeSIMの利用に厳しい規制がありました。そのため、SIMカードを差し込むトレイがないiPhone Airは、販売することができなかったんですね。
ところが最近、中国の大手通信キャリア3社が、政府からeSIMの試験的なサービス提供を許可されたとのこと。この規制緩和が、アップルにとって大きな追い風になったようです。巨大な中国市場の扉が開いたことで、アップルの未来の戦略だけでなく、世界のスマホ市場の流れも変わっていく可能性があります。
SIMカードがなくなると、何が変わる?
そもそも、スマホから物理的なSIMカードのトレイがなくなると、私たちにどんなメリットがあるのでしょうか。
一番わかりやすいのは、本体のデザインです。部品がひとつ減ることで、そのぶん内部のスペースに余裕ができます。結果として、本体をさらに薄くしたり、より大きなバッテリーを搭載したりと、設計の自由度が高まるんです。防水や防塵の性能を高める上でも有利になります。
また、海外旅行や出張が多い人にとっては、利便性が格段に向上します。これまでは空港で現地のSIMカードに入れ替えたり、Wi-Fiルーターをレンタルしたりする必要がありましたが、eSIMなら渡航前にオンラインで現地の通信プランを契約し、スマホにダウンロードしておくだけ。現地に着いたらすぐに通信を開始できます。
私たちの生活にも訪れる「当たり前」の変化
日本でもeSIMはすでに利用できますが、まだ物理SIMカードとの選択肢のひとつ、という位置付けです。しかし、世界最大級の市場である中国でeSIM専用モデルが本格的に普及し始めると、この流れは一気に加速するかもしれません。
アップルが中国で成功すれば、他のスマートフォンメーカーも追随し、eSIM専用モデルが世界的なスタンダードになる可能性があります。そうなれば、IoT機器や自動車など、スマートフォン以外のさまざまなモノがインターネットにつながる時代も、さらに後押しされることでしょう。
これまで当たり前のように使ってきた小さなICカードが、静かにその役目を終えようとしています。iPhone Airの中国での挑戦は、そんな新しい時代の幕開けを告げる、ひとつの象徴的な出来事なのかもしれませんね。
次に機種変更を考えるときは、今使っている料金プランがeSIMに対応しているか、一度確認してみるのもいいかもしれません。未来は、意外とすぐそこまで来ているようですから。