737円の客単価が映す2025年のコンビニ客数減

737円の客単価が映す2025年のコンビニ客数減

2025年、コンビニ7社の来店客数は前年比でやや減少したとみられます。それでも総売上は推計で12兆円規模となり、過去最高を記録したとされています。客単価が737.9円まで2.5%も伸びたからですが、これを値上げが原材料費の上昇を映しているだけと捉えるのは、少し単純すぎる気がします。値上げに耐えられる客だけが店に残り、耐えられない客がまいばすけっとやドラッグストアへ流れているとしたら、コンビニ各社が選んだのは客数の維持ではありません。残った客からより多く取ることです。この選択の背景を、順を追って見ていきます。


おにぎり213円という価格の記憶

2025年コンビニ業界の主要指標

指標 前年比
総売上 約12兆円 過去最高
客単価 737.9円 +2.5%
総取引数 約163億回 やや減少
おにぎり価格 100円台→213円前後 大幅上昇

Source: 出典:記事内引用データ(2025年推計)


数字だけ見ると売上は伸びているので、健全に見えます。ただ気になるのは、この売上増が客数の増加ではなく、一人当たりの支払額の増加で作られている点です。同じ人が同じ頻度で来ていても、以前より多く払っているだけかもしれません。


  • かつてのおにぎりは100円から150円程度が定番でした

  • 今のおにぎりは、一部では213円前後まで上がっているとされています

  • 客単価は737.9円で前年比2.5%増です

  • 総取引数はおおよそ163億回程度で、前年比でやや減少したとみられます

この上昇は誰にとっても同じ重さではありません。値上げ自体は原材料や人件費の上昇で説明がつきますが、消費者の頭の中には、かつての価格が記憶として残っています。150円のおにぎりを知っている人にとって、213円は単なる値上げではありません。裏切られたような感覚に近いものが、そこにはあるはずです。これは心理の問題であって、コスト計算の問題ではないのです。この心理的な壁を越えてもコンビニに通う客は、いったい誰なのでしょうか。その答えを探るには、コンビニ客層そのものの変化を見る必要があります。


20歳以下の来店比率42%から26%への低下

コンビニ来店者の年齢構成比の変化

2004年

42%
58%

2024年

26%
74%
20歳以下
21歳以上

20年間で若年層の来店比率は42%から26%へ低下したとみられます。

Source: 出典:記事内引用データ(2004年/2024年推計)


ここで人口動態の話が出てきます。広く引用されている数字によれば、2004年頃、20歳以下の客はコンビニ来店者のおよそ4割程度を占めていたとされ、2024年にはそれが3割弱程度まで下がっているとの見方があります。単純に若者の人口が減っただけなのか、それとも若者がコンビニそのものから離れているのか。この二つは分けて考える必要があります。


  • 2004年の20歳以下の来店者比率はおよそ4割程度とされています

  • 2024年にはおよそ3割弱程度まで低下したとみられます

  • 同期間で日本の少子化が加速しました

  • まいばすけっとやトライアルGOなど都市型小型スーパーが台頭しています

  • ドラッグストアも生鮮食品や惣菜を扱うようになりました

まいばすけっとに行くと、コンビニより安い惣菜が並んでいます。トライアルGOも似た戦略を取っています。ドラッグストアも今では夕方になると弁当や惣菜のコーナーが充実していて、コンビニである必要がどこにあるのか分からなくなる瞬間があります。小型スーパーやドラッグストアが価格競争を明確に仕掛けている一方、コンビニ側は便利さというブランドに頼ってきました。ただ、その優位性はじわじわと削られています。こうした外部からの圧力に対して、コンビニ各社自身は値上げという形でどう応じているのでしょうか。


セブン-イレブンとファミリーマートの値上げ戦略

おにぎり価格の推移イメージ

100円
かつて下限
150円
かつて上限
213円
現在

かつて100円から150円が定番だったおにぎりが、現在は一部で213円前後まで上昇しています。

Source: 出典:記事内引用データ(価格帯の変遷)


セブン-イレブンのプライベートブランドが値上げの主戦場になっているという見立てがありました。実際にそうなっている部分もありますが、思っていたより複雑です。プレミアム化という言葉がよく使われますが、これは単に高い商品を並べることではありません。安い商品を減らして、選択肢そのものを高い方向に誘導する動きだと見ています。


  • セブン-イレブンは高価格帯のスイーツや惣菜を強化しています

  • ファミリーマートも同様にプレミアム路線の商品を増やしています

  • 店舗によって価格帯の差が大きくなっているケースもあります

  • 労働力不足による人件費上昇が価格に反映されています

値上げは原価上昇の結果だと説明されますが、客単価が2.5%も伸びているのに客数が減っているという事実は、単純なコスト転嫁では説明がつきません。値上げに耐えられる客だけが残り、耐えられない客がまいばすけっとやドラッグストアに流れている。そう見た方が実態に近いです。物価が上がる中でコンビニ各社が選んだのは、客数を維持することではなく、残った客からより多く取ることでした。この選択が長期的にコンビニという業態の存在意義そのものを問い直す結果を招くとしたら、その代償を払うのは誰でしょうか。値上げの記憶を抱えながらも店を離れられない、まさに今店内に残っている客たち自身のはずです。