住宅ローン固定金利か変動金利か、総支払額で得なのはどちらか

住宅ローン固定金利か変動金利か、総支払額で得なのはどちらか

理解する:固定金利と変動金利の違いと総支払額の仕組み


変動金利が固定金利に逆転されるには、政策金利の0.25パーセント刻みの利上げが5回以上必要という計算があります。それでも住宅ローン利用者の68.1パーセントが変動金利を選び、全期間固定型はわずか11.2パーセントにまで落ち込んでいます。なぜここまで差がついたのでしょうか。



住宅金融支援機構の「民間住宅ローン利用者の実態調査」(2021年4月調査)によると、変動金利を選んだ利用者は全体の68.1パーセントに達しています。全期間固定型は11.2パーセント程度、固定期間選択型は2割程度とみられています。2009年以降、変動金利は常にトップの選択率を維持し、2017年頃からその割合をさらに伸ばしました。全期間固定型は6年から7年前と比べると、3分の1程度まで下がっている状況です。



この選択傾向の背景には、金利差の大きさがあります。2025年7月時点で、メガバンクの変動金利は約年0.7パーセント、フラット35の固定金利は約年1.9パーセントとされ、金利差は年1.2パーセントほどです。住宅ローンは元利均等返済方式が一般的で、返済初期ほど利息の割合が高くなります。返済期間35年のうち、最初の約10年で利息総額の半分近くを支払うことになる仕組みです。例えば元本3,500万円、金利0.5パーセントの場合、35年間の利息総額316万円のうち152万円、つまり48パーセントが最初の10年間に集中します。低金利のうちに元本を減らせる変動金利は、この仕組みの点で理にかなっているわけです。低金利期間が長く続くほど、変動金利を選んだ人が得をする構造になっています。



ここまでは、なぜ多数の利用者が変動金利を選んでいるかという背景を見てきました。ここからは、実際に金利が上昇した場合にこの選択がどこまで有利さを保つのか、具体的な数字で確認していきます。



比較する:金利上昇シナリオ別の総返済額と実践的な判断基準


七十七銀行が公開している試算では、借入額3,000万円、返済期間35年、元利均等返済という前提で、変動金利(当初0.6パーセント)と固定金利(2.0パーセント、総返済額約4,174万円)を比較しています。金利が上昇しなかった場合、変動金利の総返済額は約3,327万円で、固定金利より約850万円有利です。5年後に金利が2.0パーセントまで上昇した場合でも、総返済額は約3,950万円となり、変動金利がまだ約220万円有利な状態を保ちます。ところが5年後に2.5パーセントまで上昇すると、総返済額は約4,200万円となり、固定金利のほうが約30万円有利という逆転が起こります。



つまり、変動金利が固定金利に逆転されるには、相当な水準の利上げが必要ということです。もぐちぇっくの解説によれば、変動と固定の金利差が年1.2パーセントある場合、その差を埋めて固定が有利になるには、日本銀行が政策金利を0.25パーセント刻みで5回以上引き上げる必要があるという計算になります。実際、日本では長期にわたり大幅な利上げが続いた例は少なく、この点が変動金利選択者の多さを支える根拠のひとつになっています。ただし将来の金利動向を正確に予測することは、全国銀行協会の解説でも「ほぼ不可能」と明言されており、過去の傾向がそのまま将来に当てはまる保証はありません。5回以上の利上げが起きて初めて損益が反転するという計算自体が、変動金利選択に潜むリスクの大きさを物語っています。



借入額5,000万円のケースでも同様の傾向があります。金利差がそのまま総返済額の差に反映されるため、借入額が大きいほど金利タイプの選択が総支払額に与える影響も大きくなるわけです。全国銀行協会は、家計に余裕があり自己資金が多く、貯蓄などで金利上昇に対応できる人には変動金利が向いているとしています。一方、住宅ローンの支払いで家計に余裕がない場合や、30年、35年といった長期の借入をしている場合は、金利上昇リスクへの耐性が低いため、全期間固定を検討すべきだとも述べています。総支払額の期待値だけを見れば変動金利が有利な人が多いのですが、金利が上昇した際に家計がどこまで耐えられるかという視点を欠くと、数値上の得が実際の損に転じることもあります。この点は見落とせません。



68.1パーセントの利用者が変動金利を選ぶのは、政策金利が5回以上利上げされるまでは総支払額で有利な状態が続くという計算に基づいています。ただしこの計算は将来の金利動向を前提にしたものであり、全国銀行協会が指摘する通り、その予測は「ほぼ不可能」です。金利タイプの選択は、期待値としての有利さだけでなく、金利上昇時に家計がどこまで耐えられるか、その耐性の有無で判断すべきものだと言えるでしょう。