決済代行の裏側:越境ビジネスはなぜステーブルコインを選ぶのか

決済代行の裏側:越境ビジネスはなぜステーブルコインを選ぶのか

支払いの99%が1分未満で確認され、手数料は条件次第で0.3%まで下がります。銀行の国際送金に数千円と数日を費やしてきた越境ビジネスにとって、この数字は国内向けに作られたコンビニ決済がそもそも抱えられなかった仕組みを体現しています。速さと安さだけ見れば答えは明らかなように思えますが、円転換のタイミングで利益が削られる場面があることまでは、この仕組みの表側は教えてくれません。


コンビニ決済は日本向けに作られた仕組みなのでしょうか

決済手段ごとの比較

項目 コンビニ決済 銀行の国際送金 ステーブルコイン決済
着金までの時間 数時間から数日 数日 1分未満(99%)
手数料の目安 非公開(事業者負担) 1件数千円 0.3%から1%
海外への支払い対応 不可(受取専用) 可能 可能
主なリスク 資金繰りの読みにくさ 遅延、両替リスク 円転換時のレート変動

Source: 記事内容に基づく編集部作成


利用者が番号を受け取り、レジで現金を払う。仕組み自体はそれだけです。bitFlyerやCoincheckのような国内の暗号資産取引所でさえ、日本円の入金手段としてコンビニ払いを用意しているのは、クレジットカードを持たない層やオンライン決済に不安を感じる層を無視できないからです。


事業者側から見ると話が変わります。コンビニ決済は入金確認までに数時間から数日かかることが珍しくありません。番号を発行してから実際に店舗で支払われるまでの間、在庫を確保したりサービス提供を止めたりする必要があり、キャッシュフローの読みにくさが常につきまといます。PayPayやLINE Payのようなコード決済が普及した今でもコンビニ払いが残っているのは、便利さよりも心理的な安心感が理由だとされています。事業者の帳簿の上では、この安心感はそのままコストになっています。この国内特有の仕組みが、海外との取引になるとどう不利になるのか、具体的に見てみましょう。


越境ビジネスにとって国内決済手段はなぜ不利なのでしょうか

ステーブルコイン決済の資金フロー

1. 海外取引先またはクリエイターへの支払い依頼
↓
2. 30種類以上のステーブルコインで送金(USDT、USDCなど)
↓
3. 1分未満で支払い確認(99%のケース)
↓
4. 希望すれば受取時に即時で円へ転換
↓
5. 円転換のタイミングでレート変動リスクが発生

Source: NOWPaymentsの提供内容に基づく編集部作成


日本のSaaS企業やEコマース、マーケットプレイス、アフィリエイトプログラムが海外の取引先や個人クリエイターに支払いをする場面では、コンビニ決済はそもそも選択肢に入りません。この仕組みは受け取り専用で、海外への支払いには使えないからです。銀行の国際送金に頼ると、手数料が1件あたり数千円かかることもあり、着金まで数日という場合も普通にあります。


表向きは銀行や決済代行会社が手数料を取っているように見えますが、実際には遅延リスクや両替リスクを事業者側が丸ごと抱え込む構造になっています。クリエイターエコノミーのように、月に何十件も海外のクリエイターへ少額の報酬を払う必要があるビジネスでは、この積み重ねが地味に重くのしかかってきます。銀行経由の送金コストがここまで積み上がれば、事業者が次に探すのはステーブルコイン決済という選択肢です。


ステーブルコイン決済はどこまで実用的になっているのでしょうか

ステーブルコイン決済の主要数値

99%
1分未満で支払い確認
0.3%
パートナー条件達成時の手数料
30種類以上
対応するステーブルコイン
1秒未満
エコシステム内のメール払い出し完了までの時間

Source: NOWPaymentsの公表データに基づく編集部作成


NOWPaymentsのようなサービスは、受け取りから大量の支払い、資金の円転換、保管、ウォレット運用までを一つのAPIでまとめて提供しているとされています。支払いの99%が1分未満で確認され、エコシステム内のメール払い出しは1秒未満で完了すると公表されており、この速度感は銀行の国際送金とはまったく別物です。手数料も単一通貨の入金なら1%から、条件を満たすパートナーだと0.3%まで下がるとされています。


対応するステーブルコインは30種類以上。USDTやUSDCが代表例ですが、暗号資産を保有したくない事業者向けに、受け取った瞬間に円へ転換するオプションも用意されています。暗号資産の値動きリスクを避けながら決済の速さと手数料の低さだけを享受できる、この組み合わせは数年前には想定しづらいものでした。ただ、速さと安さの数字がそのまま事業者の得になるとは限りません。その数字の裏側にあるリスクを見てみます。


速さと低い手数料に見落としがちなリスクはあるのでしょうか


事業者にとっては資金繰りが明らかに改善し、海外のクリエイターや取引先にとっても着金の速さは直接的な利益になります。ただ、暗号資産決済を導入するということは、規制環境の変化や取引所側のシステム変更に事業の運用が影響されるという新しいリスクを引き受けることでもあります。


筆者自身、数年前にある決済サービスの速報値だけを見て導入を勧めたことがあります。実際に運用してみると、円転換のタイミングでレートが思ったより不利に動く場面があり、見立てが浅かったと反省しました。速度と手数料の数字だけで判断すると、こうした細部を見落としがちです。このリスクを踏まえたうえで、日本の決済インフラ全体がどこに向かうのかを最後に考えてみます。


日本の決済インフラは今後どちらに向かうのでしょうか


コンビニ決済が消えることはしばらくないでしょう。現金文化と高齢層の支払い習慣は、技術の進化より遅いペースでしか変わっていきません。一方で、越境取引を前提に事業を設計する企業では、国内向けの決済手段と海外向けのステーブルコイン決済を併用する形がすでに広がり始めています。


bitFlyerやCoincheckが個人向けの入り口を担い、NOWPaymentsのようなサービスが企業間の資金移動を担う。この分業が、今の日本の決済環境を形作っています。速さと安さだけを見れば越境ビジネスにとっての答えはステーブルコイン決済に見えますが、円転換のタイミングでレートが不利に動けば、その利益は実際に削られます。どちらが正しいかという話ではありません。円転換という一点をどう管理するか。これが、二つの仕組みを使い分ける事業者にとって今後も問われ続けます。