ノーベル物理学賞の発表後、量子コンピューター株はなぜ上がり続けるのか


ノーベル物理学賞の発表から2週間が経ちましたが、量子コンピューター関連銘柄の勢いは止まりません。


2025年10月7日、スウェーデン王立科学アカデミーがジョン・クラーク氏、ミシェル・デボレ氏、ジョン・マルティニス氏の3名をノーベル物理学賞受賞者として発表したその日、IonQの株価は史上最高値82.97ドルを記録しました。この発表が市場に与えた影響は、単なる一時的な材料視ではなかったようです。


受賞の意味


今回の受賞理由は「電気回路における巨視的な量子トンネル効果とエネルギー量子化の発見」でした。この研究成果は、現在の超伝導量子コンピューターの基礎となる技術です。量子力学が誕生して100年の節目となる2025年、ノーベル委員会は量子コンピューター技術の学術的価値を正式に認めたことになります。


投資家たちはこの発表を、量子コンピューター産業全体に対する信頼の証として受け止めたようです。


米国株の動き


IonQはイオントラップ方式を採用する量子コンピューター企業です。AWSやMicrosoft Azureといったクラウドプラットフォームとの提携を進めており、2025年には10億ドル規模の資金調達にも成功しています。ノーベル賞発表後、機関投資家の買いが継続的に入った形跡が見られます。


Rigetti Computingは超伝導回路ベースで84量子ビットプロセッサーを開発しています。過去1年間で株価が約73倍に上昇し、2025年10月10日には49.13ドルの史上最高値を記録しました。9量子ビットシステム2台の購入契約も発表されており、商業化への道筋が見え始めています。


D-Wave Quantumは1999年設立で、世界初の商用量子コンピューター企業として知られています。量子アニーリング方式を採用し、最適化問題に特化した技術を持っています。日本市場でもトヨタ自動車やNECなどが顧客企業として名を連ねており、アジア太平洋地域での需要が伸びているとのことです。


Quantum Computing Inc.は過去1年で約23倍の株価上昇を記録しています。薄膜フォトニックチップの商業化を進めており、2025年には複数回にわたる大規模な資金調達を実施しました。


実用化までの課題


量子コンピューターの商業利用が本格化するのは、早くても2030年以降という見方が一般的です。現在の最大の課題は、量子ビットのエラー率と安定性です。


Rigettiの直近四半期の売上高は180万ドルで、純損失は約4,000万ドルに達しています。Quantum Computingも売上規模は極めて小さく、赤字が続いています。技術力が実際の収益につながるまでには、まだ相当な時間がかかりそうです。


株価の評価も割高な水準です。Rigettiの売上高に対する時価総額の倍率は1,000倍を超えており、期待先行の側面は否めません。


日本企業の動き


日本でも量子コンピューター関連銘柄への関心が高まっています。富士通はゲート型量子コンピューターの開発を進めており、日立製作所やNECは量子アニーリング型の実装に取り組んでいます。


量子コンピューターによる経済価値は、2040年までに世界全体で最大8,500億ドルに達するという試算もあります。金融のポートフォリオ最適化、医薬品開発での分子シミュレーション、量子暗号通信など、応用範囲は広がる一方です。


今回のノーベル賞発表は、量子コンピューター技術が学術的に確立されたことを示す象徴的な出来事でした。ただし、投資判断においては、技術の将来性と現在の企業業績のギャップを冷静に見極める必要があります。高いボラティリティと不確実性を前提に、長期的な視点で技術の進展を追っていくことが求められます。


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