ビットコイン税率が55%から20%に下がる見通しです

ビットコイン税率が55%から20%に下がる見通しです

暗号資産の税率について、最高55%から一律20%へ下げる方向の法案が成立したと報じられています。ただし、具体的な適用時期や条件については、まだ確認が取れていない部分もあります。この変化は本当に生活者の実感に届くものなのか、それとも過去何度も繰り返された「制度は変わったが現場は変わらない」パターンの繰り返しなのか。それを見極めたいと思って、この記事を書いています。


正直に言うと、私はこの手の法改正が出るたびに眉唾で見る癖があります。10年近くビットコインを見てきて、制度が変わるという発表の割に実際の取引所の使い勝手が変わらなかったことを何度も見てきたからです。ただ、今回は少し違うかもしれない、という感触があります。理由は後で書きます。


暗号資産が金融資産に格付けされるとどうなるのでしょうか

暗号資産税率、55%から20%へ

改正前:最高税率

55%

総合課税(給与と合算)

改正後:一律税率

20%

株式の譲渡益課税に近い水準

ポイント:利益が大きいほど税率が跳ね上がる仕組みから、固定税率で予測可能な仕組みへ変化。ただし適用時期は未確定。

Source: 記事内容に基づく編集部作成


これまで日本では、暗号資産は法律上どちらかというと決済手段や雑所得の対象という位置づけで扱われてきました。今回の改正で、ビットコインを含む暗号資産全体が投資家保護の単一基準のもとに置かれることになります。株式や投資信託と同じ枠組みに近づく、ということです。


ここで気をつけたいのは、金融資産として認められることが、即座に安全になることを意味しない点です。制度上の扱いが変わるのと、実際のリスクが下がるのは違う話です。bitFlyerやCoincheckで取引をしている人にとって、口座の管理や表示画面が来年すぐに変わるわけではありません。変わるのは、金融庁がどこまで介入できるかという権限の範囲です。


この権限拡大で誰が得をするのでしょうか。表向きは投資家保護ですが、実際には取引所側にとってもプラスに働く可能性があります。規制が明確になれば、bitFlyerやGMOコインのような大手取引所は今までグレーだった部分を堂々とサービス化できます。体制が整っていない小規模な事業者にとっては、対応コストが重荷になるでしょう。業界の寡占化が進むのは、他の金融業界でも見られたパターンです。


税率20%への変更で生活者の負担が軽くなります

制度改正から実感までのプロセス

1. 分類変更:暗号資産を金融資産に格付け

↓

2. 権限拡大:金融庁が投資家保護基準を策定

↓

3. 業界対応:大手取引所がサービス化、小規模事業者はコスト負担

↓

4. 税制施行:一律20%課税が実際に適用開始

↓

5. 生活実感:待てる資金力がある層のみ恩恵を早期に享受

Source: 記事内容に基づく編集部作成


格付けの変更が権限と業界構造に影響することを見てきましたが、その同じ改正の中には、生活者に直接関わる税率の変更も含まれています。暗号資産の利益に対する最高税率は、かなり重い数字でした。給与所得と合算される総合課税のもとでは、利益が出れば出るほど税負担が増える仕組みです。利益額が大きくなるほど税負担の割合も上がり、税金にかなりの部分を持っていかれるケースがあったようです。周りでビットコインを長期保有していた知人も、利益確定のタイミングをずっと迷っていました。


一律20%になれば、株式の譲渡益課税に近い水準になると見られます。一番大きいのは、税負担の予測可能性が上がることです。今までは利益額によって税率が跳ね上がる仕組みだったため、確定申告のタイミングで青ざめる人が毎年一定数いました。税率が固定されれば、あらかじめ計算しやすくなります。


施行のタイミングについても頭に入れておきたい点があります。分類の変更と税制優遇の実施時期がずれる可能性があるからです。実際にどの年度からどう適用されるかは、今後の動向を見て確認する必要があります。この間に売買のタイミングを調整しようと考える人が増えるのは自然な流れでしょう。税率が下がる直前に利益確定を遅らせる動きは、株式でも過去に見られた行動パターンです。先に得をするのは、待てる余裕がある人だけかもしれません。


bitFlyerとPayPayの実務はいつ変わり始めるでしょうか

金融資産格付けが変える三つの構図

観点 変化前 変化後
法的位置づけ 決済手段/雑所得 投資家保護の金融資産
税負担の課税方式 総合課税、最高55% 一律20%(予定)
業界構造への影響 グレーな運用が多い 大手優位、寡占化が進む
監視・規制の範囲 限定的な介入 本人確認や大口報告の強化

Source: 記事内容に基づく編集部作成


税率と分類の制度が固まったとしても、それが実際のサービスにどう反映されるかは別の問題です。制度が変わっても、日常的に使うサービスの見た目はすぐには変わりません。bitFlyerやCoincheckのアプリを開いても、来月から画面が一新するわけではないでしょう。変化は数年かけてじわじわと出てきます。金融資産としての規制対象になることで、金融庁は本人確認の厳格化や、大口取引に対する報告義務の強化を進めていくはずです。


PayPayやLINE Payのような決済アプリと暗号資産の連携についても、今後の動きが気になります。これまでは決済手段としての側面が強調されてきましたが、金融資産としての位置づけが明確になれば、決済アプリ側がビットコインを扱う際の姿勢もより慎重になるかもしれません。セブン・イレブンやファミリーマートのようなコンビニでの暗号資産関連の取り扱いは今のところ限定的です。それでも、規制の明確化はこうした実店舗連携を後押しする土台になり得ます。実店舗での対応が進むかどうかは、消費者側の需要よりも、決済事業者側のリスク判断が握っているはずです。


米国の規制強化と比べると日本の位置づけが見えてきます


国内の実務がゆっくり変わっていく一方で、暗号資産を国家がどう扱うかという流れは日本国内だけの話ではありません。同じ時期に流れているニュースを見ると、米国財務省がイランの暗号資産取引所に対して制裁を科したという話があります。イラン革命防衛隊への資金移動に絡む問題で、日本の話とは直接関係ないものの、暗号資産が国家レベルの金融監視の対象として扱われる流れそのものは共通しています。ビットコインが匿名の資産だという認識は、もうかなり古くなっていると感じます。


日本が今回、暗号資産を金融資産として位置づけたことも、この世界的な流れと同じ方向を向いています。独立した新しい資産クラスというより、既存の金融システムの一部として管理する方向に進んだということです。


見立てを外した理由を振り返ってみます


数年前、私はこの手の税制改正議論が出るたびに、どうせ骨抜きになると思っていました。過去に何度も検討はされても実現しなかった経緯があったからです。今回も似たような結末を予想していたのですが、実際に成立まで進んだのを見て、自分の見立てが外れたことを認めないといけません。


何が違ったのか考えると、今回は分類の変更と税制の変更が同時にパッケージ化されていた点が大きいと思います。単なる税率の見直しだけなら反対の声も強かったはずですが、投資家保護という枠組みとセットにしたことで、議論の土台そのものが変わりました。制度を変えるときは、単体で押すよりも組み合わせで押すほうが通りやすい。当たり前ですが、見落としがちな教訓です。


これから注視すべき実務上のポイントとは


今後の一年で見ておきたいのは、金融庁が具体的にどのような投資家保護の基準を作るかという点です。開示義務の内容、取引所に求められる資本要件、そして既存の暗号資産交換業者がどこまで対応コストを吸収できるか。この三つによって、業界の構図がかなり変わってきます。


税率20%への移行が実際に予定通り実施されるかどうかも、まだ確定した未来ではありません。政治の状況や財政事情によって、実施のタイミングが前後することは十分あり得ます。制度が決まったというニュースと、その制度が生活の中で実感できるようになるまでの間には、いつも思っている以上の距離があります。今回の改正の恩恵を早く受けられるのは、待てる資金力を持つ層です。目先の利益確定を迫られる層には関係のない話として過ぎていく可能性があります。冒頭で立てた問い、この変化が生活者の実感に届くのかという問いに対する今の答えは、届く人と届かない人がすでに分かれ始めている、というものです。