ビットマインが2025年9月時点で206万9千個のイーサリアムを保有し、世界最大のETH保有企業になりました。これは全イーサリアム供給量の約1.71%にあたり、時価92億ドル(約1兆4000億円)に達します。ビットコイン中心だった企業の暗号資産保有トレンドが、イーサリアムへと拡大している証拠です。
「5%の錬金術」という独特な買い集め目標
ビットマイン会長のトム・リー氏が語る「5%の錬金術」は、イーサリアム全供給量の5%確保を目指す野心的な目標です。現在の1.71%から5%まで到達するには、さらに400万個以上のETHを買い集める必要があります。
この大規模な買い集め戦略の理由は明確です。
年間3-4%の安定したステーキング収益が得られること。大量保有者ほど市場への影響力が増大するパワーロー効果があること。そして、ステーキング参加によってイーサリアムのネットワークセキュリティに貢献できること。
ビットコインと違い、イーサリアムは保有するだけで追加収益が得られる点が、企業にとって特に魅力的なのです。
ウォール街とAIが生み出すイーサリアムのスーパーサイクル
トム・リー氏は、2つの大きな変化がイーサリアムのスーパーサイクルを作り出していると説明します。
まず、ウォール街のブロックチェーン移行です。伝統的金融機関がブロックチェーン技術を採用し、イーサリアムが新しい金融インフラとして定着しつつあります。1971年のブレトンウッズ体制崩壊が現代のウォール街を作ったように、2025年のブロックチェーン転換が新しい金融システムを生み出しているのです。
次に、AIエージェントのトークンエコノミーです。AIとエージェントAIがトークン経済を創出し、イーサリアムネットワークが中核インフラになっています。スマートコントラクトとDeFi(分散型金融)エコシステムが、AIサービスの決済と取引基盤になっているのです。
ビットマインの隠れた財務戦略
ビットマインは単にETHを買って保有するだけではありません。巧妙な財務戦略が隠されています。
初期の2億5000万ドルのPIPE(私募増資)資金で始めて、わずか数週間で700%以上資産を増やしました。ビットマイン株は1日平均17億ドルが取引され、米国上場企業の中で取引量30位を記録。バンク・オブ・アメリカ(29位)より取引が活発で、エクソンモービル(31位)を上回っています。
さらに「ムーンショット戦略」として、資産の1%をイーサリアムエコシステムの革新的プロジェクトに投資。最近はEightco Holdingsに2000万ドルを投資し、ワールドコイン(WLD)エコシステムの拡大を支援しました。
韓国投資家のビットマインラッシュ
2025年7月、韓国の個人投資家がビットマイン株を2億5900万ドル分購入しました。8月にはテスラ株6億5700万ドルを売却し、ビットマインに4億2600万ドルを投資。ビッグテック株から暗号資産関連株への資金移動が顕著です。
この現象の背景には、イーサリアムETF承認への期待、ステーキング収益の魅力、機関投資家の参加増加、米国退職年金の暗号資産組み入れ検討などがあります。
マイクロストラテジーとの比較
マイクロストラテジーがビットコイン国庫企業の先駆者なら、ビットマインはそのイーサリアム版です。
マイクロストラテジーは63万6505BTC(710億ドル)を保有する世界1位の暗号資産国庫企業。一方、ビットマインは206万9443ETH(92億ドル)を保有する世界2位。違いは、ビットマインがステーキングで年3-4%の追加収益を得られる点です。
市場への影響とリスク
プラス面では、機関の信頼度向上、流動性減少による価格サポート、ネットワークセキュリティ強化、イーサリアムエコシステムの発展支援があります。
一方で、大量売却時の価格急落リスク、市場操作の可能性、規制変化による不確実性、過度な中央集権化への懸念も存在します。
特にビットマインが目標の5%を達成すれば、単一企業のイーサリアム市場への影響力が過大になる可能性があります。
ビットマインのイーサリアム買い集めは、単なる投資を超えてブロックチェーン金融の未来を先取りする戦略的な動きです。ウォール街とAIが交わる地点でイーサリアムが中核インフラとなり、ビットマインはその中心に立とうとしています。ただし、過度な中央集権化と市場変動性の拡大といったリスクも考慮する必要があるでしょう。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。