退職後の資産、なぜ「地味な配当株」が欠かせないのか


2025年10月現在、日本の個人向け国債は10年満期で0.97%です。一方、三菱UFJフィナンシャル・グループは配当利回り3%台、第一生命HDや日本郵船は4%超の配当を出しています。


この差が、退職後の資産運用で配当株が注目される理由です。


急落相場で見えた、配当株の本当の価値


2025年9月、日経平均が急落したとき、楽天証券の窪田真之氏は「今こそダウの犬戦略」を推奨しました。配当利回り4.5%のポートフォリオを組むことで、株価下落時の心理的支えになると指摘しています。


ソウルで投資を学んできた私が感じるのは、日本の配当株市場の独特な安定性です。花王は35期連続増配、三菱HCキャピタルは26期連続増配で利回り3.7%を維持しています。こうした実績は、韓国市場ではなかなか見られません。


なぜ銀行株と通信株が選ばれるのか


2025年6〜8月の野村証券人気ランキングで、銀行業が4銘柄、輸送用機器が3銘柄ランクインしました。三菱UFJ、三井住友、みずほといった大手銀行が揃って上位に入っています。


大手銀行は2025年3月期決算で堅調な実績を示し、自社株買いや増配を発表しました。20〜30年ゾーンの超長期債利回り上昇も、銀行収益への追い風です。


通信セクターでは、NTT、ソフトバンク、KDDIが人気です。携帯各社は2025年4〜6月期決算で端末購入プログラム費用が拡大しましたが、安定した収益構造により配当維持力が評価されています。


配当成長株という選択肢


高配当だけでなく、配当成長株も重要です。アイカ工業は建材・接着剤メーカーで、26年連続減配なし、15年連続増配を達成しています。売上の半分以上が海外のため、円安メリットも享受しています。


野村不動産は2025年3月に株式分割を控え、配当利回り4%台でPBRも1倍と、期待できる水準です。配当重視の株主還元方針も表明しています。


退職後のポートフォリオ調整


日経新聞が紹介した野尻哲史氏の著書『100歳まで残す 資産「使い切り」実践法』では、退職後はリスクを下げるために債券のウエイトを高めることを推奨しています。


例えば、株式投資信託2000万円のうち500万円を個人向け国債に乗り換える方法です。満期まで保有することを前提に、引き出しタイミングと一致させます。


ただし債券はNISA(少額投資非課税制度)で保有できないため、非課税投資にはなりません。この点は注意が必要です。


株主還元の増加トレンド


日本企業全体の株主還元額(配当+自社株買い)は増加傾向にあります。東京証券取引所が上場企業にPBR1倍割れ是正を要請していることもあり、今後も増配や自社株買いを積極化する企業が増えると期待されています。


2024年度の株主還元額は、配当も自社株買いも野村証券予想値で過去最高水準です。


配当再投資の複利効果


高配当株ETFの運用実績を見ると、インカムゲイン(分配金収入)とキャピタルゲイン(価格変動)の両方が資産増加に寄与しています。分配金を再投資すれば、複利効果でさらに資産が増えます。


NF・日経高配当50 ETFの2017年設定来のデータでは、トータルリターンにおける再投資効果が明確に表れています。


地味だからこそ、長く持てる


配当株投資の魅力は、派手さがないことです。毎日株価をチェックする必要もなく、年に数回配当金が入ってくるのを待つだけです。


この退屈さが、実は退職後の資産運用には最適なのです。急騰急落に振り回されず、安定した現金流入を得られます。


トランプ関税の影響で日本の自動車株が揺れたときも、トヨタ自動車の配当利回りは安定していました。2025年7月、日本との関税交渉で税率が27.5%から15%に引き下げられたことも、投資家心理を改善させました。


こうした市場変動の中でも、配当株は着実に配当を出し続けます。それが、退職後の生活を支える力になります。