ピーター・ブラント推奨のポートフォリオは日本のZ世代に適用できるのか?


伝説的トレーダー、ピーター・ブラント氏が2025年9月にX(旧Twitter)で提案した投資配分―ビットコイン10%、不動産20%、S&P500連動ETF(SPY)70%―が海外で話題になっています。50年以上の市場経験を持つプロの意見として重みがありますが、日本の若い世代にとって、この配分は本当にベストなのでしょうか?


日本と米国では投資環境が大きく異なります。税制、取引コスト、そして何より投資文化そのものが違う中で、米国の投資戦略をそのまま適用するのは無理があります。日本の実情に合わせて、この提案をどう読み解くべきか考えてみましょう。


ビットコインETFの登場が変えた投資の風景


2024年1月、米国でビットコイン現物ETFが承認されました。ブラックロックのIBITは開始から18ヶ月で75万BTC以上を保有し、運用資産は約850億ドルを超えています。機関投資家がここまで本格参入しているということは、ビットコインがもはや「投機対象」ではなく「資産クラス」として認識されているということでしょう。


しかし、日本ではまだビットコイン現物ETFは承認されていません(2025年10月時点)。日本の投資家がビットコインに投資する場合、暗号資産取引所での直接購入か、米国ETFへの投資になります。


日本でのビットコイン投資の課題:

  • 暗号資産の税制が厳しい(雑所得扱いで最大55%の税率)
  • 損失の繰越控除ができない
  • 他の所得との損益通算が不可
  • 米国ETFを買う場合、為替リスクと二重課税の問題

ブラント氏の推奨する10%配分は妥当に思えますが、日本の税制を考えると、ビットコインの比率はもっと慎重に検討すべきかもしれません。利益が出た時の税負担が重いため、むしろ5%程度に抑えて、税制優遇のあるつみたてNISAの枠を最大限活用する方が賢明です。


日本の不動産事情は米国とまったく違う


米国では約300万戸の住宅不足があり、Z世代が住宅を購入するのは困難です。そのためREIT(不動産投資信託)が人気を集めています。EPR PropertiesやInvitation HomesといったREITは配当利回り4〜6%で、若い世代の支持を得ています。


一方、日本の状況は異なります:


日本の不動産市場の特徴:

  • 人口減少により将来的な需要減が見込まれる
  • 東京圏以外では空き家問題が深刻化
  • 新築志向が強く、中古住宅市場が未成熟
  • 不動産価格の長期的な上昇は期待しにくい

日本のJ-REITは2001年から市場が存在し、東証REIT指数の配当利回りは3〜4%程度です。ただし、米国REITと比べて以下の違いがあります:


  • 市場規模が小さい(時価総額約17兆円 vs 米国の約150兆円)
  • オフィスビルの比率が高く、リモートワーク普及の影響を受けやすい
  • 地震リスクなど日本特有のリスク要因がある

ブラント氏の推奨する20%という配分は、日本ではやや高いかもしれません。J-REITを10〜15%程度に抑え、残りを他の資産クラスに振り向ける方がバランスが良いでしょう。


S&P500への投資―日本からの視点


SPY(S&P500連動ETF)は2025年9月時点で年初来リターン13.60%、過去20年間の年平均リターン10.87%という安定した実績を誇ります。米国市場の成長を享受できる優れた投資先です。


しかし、日本の投資家にとって重要なのは「どうやって買うか」です:


選択肢1:米国ETF(SPY)を直接購入

  • メリット:経費率が低い(0.09%程度)、流動性が高い
  • デメリット:為替リスク、外国税額控除の手続きが必要、配当に対する二重課税

選択肢2:日本の投信で米国株インデックスを購入

  • メリット:円建てで購入可能、つみたてNISAで税制優遇、配当の二重課税なし
  • デメリット:信託報酬がやや高い(0.1〜0.2%程度)

選択肢3:つみたてNISAでS&P500連動の投信を積立

  • メリット:年間120万円まで非課税で投資可能、20年間非課税で運用
  • デメリット:年間投資枠の制限

日本のZ世代にとって、つみたてNISAは絶対に活用すべき制度です。年間120万円の枠を使い切るだけでも、20代から始めれば40代で2400万円の投資元本になります。これが全て非課税で運用できるのですから、使わない手はありません。


ブラント氏の推奨する70%という配分は、つみたてNISAの枠を考えると、日本では実質的にもっと高い比率になるかもしれません。むしろ「投資可能資金の大部分をつみたてNISAで米国株インデックスに」という戦略が、日本のZ世代には最適だと言えます。


日本のZ世代に適したポートフォリオ案


ブラント氏の提案を日本の実情に合わせて調整すると、以下のような配分が考えられます。


保守的プラン(安定重視・20代後半〜30代)

  • つみたてNISA枠(S&P500/全世界株式インデックス):60%
    • 月10万円(年120万円)を積立
    • 米国株中心または全世界分散
  • J-REIT:10%
    • インカムゲイン目的
    • 分配金は再投資
  • ビットコイン(暗号資産):5%
    • 税制を考慮し最小限に
    • 長期保有前提
  • 現金・日本国債:25%
    • 緊急資金として月収の6ヶ月分
    • 個人向け国債変動10年など

バランス型プラン(成長と安定の両立・20代前半〜中盤)

  • つみたてNISA枠(S&P500/全世界株式):50%

    • 年間枠を最大活用
  • 課税口座での米国株/全世界株式インデックス:20%

    • つみたてNISA枠を超える分
  • J-REIT:10%

  • ビットコイン:10%

    • リスク許容度が高い場合のみ
  • 個別成長株(日本・米国):5%

    • 勉強も兼ねて少額から
  • 現金:5%

    • 月収の3ヶ月分程度

積極型プラン(高リターン狙い・投資経験者向け)

  • つみたてNISA枠(米国株インデックス):40%

  • 課税口座での米国株/個別成長株:25%

    • ハイテク株、テーマ型ETFなど
  • ビットコイン/イーサリアム:15%

    • 税制デメリットを理解した上で
  • J-REIT:10%

  • 新興国株式/コモディティ:5%

  • 現金:5%


日本特有の投資環境を理解する


日本で投資をする上で、米国と決定的に違うポイントがいくつかあります。


つみたてNISAとiDeCoの活用は必須


つみたてNISA:

  • 年間120万円まで非課税で投資可能
  • 20年間非課税で運用
  • いつでも引き出し可能(流動性が高い)

iDeCo(個人型確定拠出年金):

  • 掛金が全額所得控除(節税効果が大きい)
  • 運用益も非課税
  • 60歳まで引き出せない(老後資金として確実に貯められる)

会社員の場合、月23,000円(年27.6万円)まで掛金を拠出でき、所得税・住民税合わせて年間約8万円の節税になります(所得税率20%、住民税10%の場合)。


為替リスクをどう考えるか


米国資産に投資する場合、円安になれば為替差益、円高になれば為替差損が発生します。2024年には一時1ドル=160円近くまで円安が進みましたが、その後140円台まで戻すなど、変動が激しくなっています。


為替リスクへの対応策:

  • ドルコスト平均法で積立(為替タイミングを分散)
  • 一部を円建て資産(日本株、J-REIT)で保有
  • 超長期投資なら為替は平均化されるという考え方

個人的には、Z世代の超長期投資であれば、為替を気にしすぎる必要はないと思います。20〜30年のスパンで見れば、為替は上下を繰り返しながらも平均化されていきます。


日本株への投資はどうするか


ブラント氏の提案には日本株が入っていませんが、日本に住む私たちにとって、日本株への投資は意味があるのでしょうか?


日本株投資のメリット:

  • 為替リスクがない
  • 株主優待制度がある(生活費の節約になる)
  • 配当金は国内課税のみ(二重課税なし)

デメリット:

  • 長期的な成長率は米国株に劣る
  • 個別株投資はリスクが高い

日本株に投資するなら、日経225やTOPIXのインデックスファンドで分散するか、株主優待目的で好きな企業を少額保有するのが良いでしょう。ポートフォリオ全体の10〜20%程度が適切かもしれません。


実践:まず何から始めるべきか


理論はわかったけど、具体的に何から手をつければいいのか。優先順位をつけて考えてみましょう。


ステップ1:つみたてNISA口座を開設(最優先)


楽天証券、SBI証券、マネックス証券などのネット証券で口座開設。手数料が安く、商品ラインナップが豊富です。


おすすめのファンド:

  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
  • 楽天・全米株式インデックス・ファンド

信託報酬0.1%前後の低コストファンドを選びましょう。


ステップ2:毎月の積立額を決める


収入の10〜20%を投資に回すのが理想的です。月10万円積立できれば、つみたてNISAの年間枠120万円を使い切れます。


それが難しければ、まずは月3万円(年36万円)から始めて、昇給したら増額していく方法もあります。


ステップ3:iDeCoも検討する


老後資金として確実に貯めたいなら、iDeCoも並行して活用しましょう。節税効果が大きいので、つみたてNISAの次に優先度が高いです。


ステップ4:ビットコインは余裕資金で


税制が不利なので、ビットコインは「なくなってもいいお金」で少額から始めるのが賢明です。月1〜2万円程度を暗号資産取引所で積立購入し、長期保有するスタイルが良いでしょう。


bitFlyer、Coincheck、GMOコインなどが主要な取引所です。


ステップ5:情報収集と学習を続ける


投資は一度始めたら終わりではありません。定期的に以下をチェックしましょう:

  • ポートフォリオのリバランス(年1〜2回)
  • 投資方針の見直し(ライフステージの変化に応じて)
  • 市場動向の把握(ただし短期的な変動に一喜一憂しない)

継続こそが最強の戦略


どんなに完璧なポートフォリオを組んでも、続けられなければ意味がありません。市場が暴落した時、含み損が膨らんだ時、それでも淡々と積立を続けられるかが勝負です。


2020年3月のコロナショックでは、日経平均が一時16,000円台まで下落しましたが、その後30,000円を超えて回復しました。あの時に狼狽売りした人は損失を確定してしまいましたが、積立を続けた人は大きく資産を増やせたはずです。


継続のコツ:

  1. 自動積立にする:証券口座から毎月自動引き落としで積立設定
  2. 見ない勇気を持つ:日々の値動きを追わない
  3. 長期視点を忘れない:20〜30年後を見据える
  4. 無理のない金額で:生活を圧迫する金額は避ける

まとめ:自分に合ったポートフォリオを作ろう


ピーター・ブラント氏の提案は、米国の投資家にとって優れた指針です。しかし、日本のZ世代がそのまま真似するのは賢明ではありません。


日本の投資家が考えるべきポイント:

  • つみたてNISAとiDeCoを最大限活用する
  • 暗号資産の税制デメリットを理解し、配分を慎重に決める
  • 為替リスクを長期的視点で捉える
  • 日本の不動産市場の特性を理解する
  • 自分のリスク許容度とライフプランに合わせてカスタマイズする

投資に絶対的な正解はありません。大切なのは、自分の価値観や人生設計に合った戦略を立て、それを長期的に実行し続けることです。


20代から始めれば、複利の力で資産は雪だるま式に増えていきます。月10万円を30年間、年利5%で運用すれば約8,300万円になります。早く始めるほど有利なのが投資の世界です。


今日から、一歩を踏み出してみませんか?


Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


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