チェーンリンク(LINK)の取引所保有量が2025年9月現在、1億6,180万枚まで減っています。2023年中頃の2億2,700万枚から29%も減少。取引所から個人ウォレットへトークンが流出するこの現象、どう解釈すべきでしょうか。
取引所の供給量減少が意味すること
オンチェーンデータを見ると興味深いパターンが浮かび上がります。取引所保有量の減少は、投資家がトークンを取引所から個人ウォレットに移していることを示しています。
- 取引所にあるトークン=いつでも売れるトークン
- 個人ウォレットのトークン=長期保有の意思があるトークン
こう単純化すると、売り圧力が減ったと解釈できます。実際、2023年中頃にLINK価格は6-7ドルでしたが、現在は23ドル水準。230%以上の上昇です。
ただし注意点があります。短期的な取引増加を供給減少と誤解する可能性、DeFiプロトコルやステーキングへの移動分も含まれること、取引所間の移動を実際の引き出しと勘違いする可能性などです。
チェーンリンクリザーブの登場と本物の供給ショック
2025年5月、チェーンリンク財団が新しい仕組みを導入しました。チェーンリンクリザーブです。
システムの核心はシンプルです。プロトコル収益の一部をLINKに変換し、変換されたLINKは永久保管(売却なし)。毎月約0.4%ずつ流通供給量が減少する効果があります。
すでにリザーブは23万7,014枚のLINKを蓄積。2026年第3四半期までに全流通量の5-7%を固定できるという分析も出ています。
Payment Abstractionという技術が鍵となります。企業がドルやステーブルコインで支払うと、自動的にLINKに変換されてリザーブに蓄積される仕組みです。
クジラと機関投資家の動きをどう読むか
オンチェーンデータが示すもう一つのシグナルがあります。クジラ投資家の行動です。
2025年第1-3四半期の間に、10万-100万LINK保有ウォレットが4.2%増加。クジラたちは110万枚のLINKを追加購入。約8,500万ドル規模のトークン蓄積です。
一方で、一部の超大型クジラ(100万枚以上保有)は逆に4,500万枚を売却しました。この相反する動きをどう解釈すべきでしょうか。
- 中規模クジラの増加=新規機関投資家の参入
- 超大型クジラの売却=初期投資家の利益確定
このパターンは市場が成熟していくシグナルとも読めます。特定の少数ではなく、多数の機関が参加する健全なエコシステムへの変化です。
錯覚かもしれない理由
すべての指標が前向きに見えますが、批判的な視点も必要です。
取引所供給の減少は過去にも何度かありましたが、必ずしも価格上昇につながりませんでした。2021年にも似たパターンが現れましたが、その後市場全体の調整とともに下落しました。
暗号資産市場全体の雰囲気、規制環境の変化、マクロ経済状況。これらの要因が供給不足より大きな影響を与える可能性があります。
取引所保有量データは完璧ではありません。一部の取引所はデータを公開せず、コールドウォレットアドレスの把握が困難な場合もあります。
実際にどう判断すべきか
供給不足と価格の因果関係を判断するには、複数の指標を組み合わせて見る必要があります。
時系列分析で供給減少が先に起き、価格が後から上昇するか確認。オンチェーン活動度として、アクティブアドレス数の増加、ネットワーク使用量の変化、DeFi TVLの推移をチェック。
最近チェーンリンクはCCIP v1.6アップグレードで60以上のブロックチェーンをサポートし、JPMorgan、SBIグループなど大手金融機関との協力を拡大しています。こうした実質的な成長が供給不足と重なるとき、本物の上昇モメンタムが生まれるのです。
結論として、チェーンリンクの供給不足現象は複数のデータが複合的に裏付けています。単純な錯覚というより、実際に構造的な変化が起きていると見るのが妥当でしょう。
ただし暗号資産市場の変動性を考慮すると、このシグナルだけで未来を確信するのは難しいです。オンチェーンデータは一つのパズルピースに過ぎません。
Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。