ビットコイン、552倍から6倍へ―サイクル収益率が減り続ける理由


ビットコインの価格サイクルが、静かに変わりつつあります。


2024年4月の半減期から約1年半が経った今、市場を見渡すと、過去とは明らかに異なる様子が見えてきます。2011年から2015年のサイクルでは552倍という驚異的な上昇を記録しましたが、2024年の半減期以降は約33%の上昇にとどまっています。


これは単なる偶然でしょうか。それとも、何か構造的な変化が起きているのでしょうか。


半減期なのに、様子が違う


2024年4月20日、ビットコインは4度目の半減期を迎えました。これまでと大きく違ったのは、半減期の直前に史上最高値(73,800ドル)を記録したことです。過去のサイクルでは、半減期の後に価格が大きく上昇するパターンが一般的でしたが、今回は事前に高値をつけてしまいました。


もう一つの大きな違いは、2024年1月に米国で現物ビットコインETFが承認されたことです。ETF承認後わずか3ヶ月で約592億ドルの資金が流入し、需給構造そのものが変わってしまいました。


過去の半減期では、2012年が91倍、2016年が29倍、2020年が8倍と、毎回収益率が縮小してきました。専門家の予想では今回のサイクルは約3.5倍の上昇が見込まれていましたが、実際には半減期から1年後の時点で33%程度の上昇に留まっています。


市場の主役が変わった


最も大きな変化は、誰がビットコインを買っているかです。


米国では、ビットコインETFを保有する機関投資家が1,200社を超えました。公的年金など長期保有を前提とする投資家が、金と同様にインフレ耐性の資産として投資する動きが増えています。


これは何を意味するのでしょうか。過去のような個人投資家主導の熱狂的な相場ではなく、機関投資家が冷静に買い進める市場になったということです。ETF投資家や企業投資家は「予想以上に強いホルダー」であり、この所有構造の変化が長期的な価格安定性向上とボラティリティの低下につながっています。


2025年10月現在、ビットコインは円建てで1,700万円台を推移しており、8月につけた1,800万円の最高値からやや下落していますが、それでも高値圏での推移が続いています。


4年サイクルは終わるのか


K33リサーチのアナリストは、「ビットコインのブーム・アンド・バーストの価格変動を長年特徴づけてきた4年サイクルは、資産の成熟に伴い過去のものになる可能性がある」と指摘しています。


マイニング報酬の半減の影響は縮小している一方で、機関投資家のアクセス拡大や国家の関心の高まりに伴い、他のマクロ経済要因のほうが重要になってきているというのです。


2023年から2025年にかけて、地政学リスクや金融システム不安が高まった局面でビットコインだけが上昇する「デカップリング(非連動化)」現象も見られました。これは、ビットコインが投機的な資産から、より確立された価値の保存手段へと移行しつつあることを示唆しています。


収益率が減るのは悪いことか


ここまで読んで、「じゃあビットコインはもう儲からないのか」と思われるかもしれません。


しかし、見方を変えてみると、市場の成熟は必ずしも悪いことではありません。2022年から2025年のサイクルは、過去に比べて下落が抑えられ、回復も速く安定しています。これはETFや機関投資家、さらには政府資金の本格的な流入により、市場の底堅さが強まっているためです。


過去のような「一晩で2倍」といった劇的な上昇は期待しにくくなりましたが、その代わりに「突然半分になる」といった極端な下落リスクも減りつつあります。


今のビットコイン市場は、個人投資家が熱狂的に買い支える投機の場から、年金基金や機関投資家が長期的に保有する資産市場へと変わりつつあります。そのプロセスで、収益率が減少するのは自然な流れなのかもしれません。


過去の爆発的な上昇を知る人にとっては物足りなく感じるかもしれませんが、より多くの人が安心して参加できる市場になっていく過程なのだと、私は考えています。


Disclaimer: 本記事は情報提供を目的としており、投資・税務・法律・会計上の助言を行うものではありません。記載内容の正確性や完全性を保証するものではなく、将来の成果を示唆するものでもありません。暗号資産への投資は価格変動が大きく、高いリスクを伴います。最終的な投資判断はご自身の責任で行い、必要に応じて専門家にご相談ください。


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